沢井鯨さん
『P.I.P. -Prisoner in PhnomoPenh
プリズナー・イン・ブノンペン
沢井鯨 小学館 2000/7 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 灼熱の国で
「カンポジア」....アンコール・ワット遺跡が名高いこの国は 様々な犯罪と汚職が渦巻き、 国民総人口の1/3を支配層が虐殺した、ポルポト時代の傷がまだ癒えない国。

教師・イザワは夏休みを利用した旅の途中、ふとこの国に立ち寄ったことを 早々に後悔することになるのだが、置買屋で出会ったタオという少女に何故か心を惹かれる。 .........タオを忘れられないイザワは、再びカンポジアを訪れ孤児院で教鞭をとりながら彼女を捜していた。

だが.......無実の罪で捕らわれた彼は、財産を奪われ、 横にすらなれない狭い牢獄で、殺人者や誘拐組織の人間に囲まれ死と隣合わせ、 人間モラルの極限を強いられる牢獄生活を送る。 そしてまた奪われ、騙され.....。
騙し騙され合いの先に、イザワはこの国で何を?そしてタオは....。
世界放浪中、謂れの無い罪で投獄された著者の体験を元に書かれた問題作。
感想 「ロリータ」⇒「ドキュメント」⇒「ハードボイルド」
前半部分は.....なんか読んでる感じがナボコフの『ロリータ』いや全然内容違うけども。
ロリータは主人公が陰湿で変態なんで、読むと鬱鬱とするのですが、 こちらは主人公は一般人。周囲の人間はかなりヤバメ.... 朝っぱらから大麻をバシッと決めて、テンション上げたら、ビールを飲みつつYY談議。 ワイ談のYは(略)フェチ天国、逝ったら地獄。
でエイズなんてちっとも怖く無ぇ、一日10$?8$にまけろやー ひゃっほう300$で(以下略)......失礼しました。
長期滞在日本客の誤まった面々。そりゃ外交官もやる気なくすわな......
笑うに笑えない場面や、品の無い表現ありますが、実際こんな場所ってあるのでしょう。

中盤からガラっと雰囲気が変わり、ドキュメントタッチ。 カンポジアという国の歴史と、ポルポト時代の悲劇。そして現在のカンポジアが抱える様々な問題....。
多くは被害者だとしても同時に加害者でもあり、現実問題としてどうにもならない..... そんなことが切々に伝わってきます。前半部分とのギャップも気にならない。 著者が牢獄生活中に聞いたという様々なエピソードは、小説風味にした部分もあるでしょうが殆ど 事実だとも思います。
シラフで読んでるとやるせなくなってくる部分です......

そして後半は胸のすくような感じで、物語が収束していきます。
.....ハードボイルド的展開でご都合的なこともありますが。

そしてラストシーン(っていうのかね) 「物語の閉じ方で、作品に対する見方がガラっと変わる」
困った私なのですが(汗)終わり方も綺麗です。
破局的展開(好き)や、「以下続く!」とかもいいですが、 希望を持たせる王道的なラストってのは、やっぱりいいですね........前半部分が嘘のようだ(笑)

次回作もイザワ君が主役で、今度は純愛?路線だというので楽しみです。
沢井鯨さん、はやくスポンサー見つけて旅に出れるといいですね。 羽田空港のバイトでは次回作まで時間が掛かりそうで心配です.....
感想(でもない) R−15指定
品が無い表現も多々ありますけど、私自信品が無いので気になりません.....というか得意です。 かと思うと綺麗な場面が突然はいって、まさに混沌の国カンポジア、って感じします..... 行ったことないけど。この本読んだら怖くて行けなくもなったけど。 アンコールワットとトムはいつか行ってみたかったのに〜。

ちなみに、タオは最初からそうだと思っていました。 まだわかんないぞ〜孤児院を狙っているのかも知れないのだ。騙されたらアカン。 まさか次回作はタオがお相手じゃないだろうね.....

気になったのですが、カンポジアからの留学生の方や、在日の方とかがこの作品を読むとどう思うのでしょうか? 凄く気になります......事実を含むにしても悪意・好意は別にして、 表現的にはかなり不快感を催す書き方もあるんじゃないかなぁ...と思って。手法ではあるのでしょうが。
読んで、感想を書いて、寝て起きて家に帰ってきたら、なんとなくそんな部分が気になりました。

仮に「見せ方」の一つだとしても、許される範囲とそうでない範囲、そのどちらに傾くのかな..... 聞いてみないとわからないし....でも聞けないし。 カンポジア人で、日本語を小説を読めるほどに理解していて、 なおかつNETで日本語のHPを..........なんてムチャな検索したんですが、当然のことながら引っ掛かりませんでした。 留学生の方はおそらく学術・技術系だと思うので、上記のキーワードで掛かるわけもない。
私は、この本がカンポジアに対する侮蔑や悪意で書かれた本ではないと思っています、 というか絶対にそうでしょう。
ですが、礼に逸する表現が多く含まれているのは事実です。 それがどうなのか......カンポジアのヒエラルキー (あんま好きな言い方じゃない、そもそもオカシイ。特にバランスの悪い▲形は) の上の方の人は恐らく不快感を感じるのではないか?とも...... でも下の方の人は、どう思うのだろうか......という事が今はなんとなく気になっています....。 じっさい、日本語小説を読める時点で、下層ヒエラルキーではない....矛盾してますね、質問事態が。
KeyWord:『壁の落書き』 深夜TVでもやってたな....
「ここは悪魔の住む恐ろしい国だ。正義など存在しない。
 金が無ければ無実の人間でも重い刑を負わされ、金が無ければ人殺しでも無罪となる」
「わたしは自らが受けた屈辱を、死を以って抗議する」
KeyWord:『霧笛』 マックダンとジョニー
「それが人生というものだ。決して帰らぬものの帰りをいつも待っているということ、
 そして、しばらくたつとその相手を滅ぼしたくなる。
 滅ぼしてしまえば、自分が二度と傷つかなくてすむから.....」
KeyWord:譲原 元・ホスト、現・孤児院院長
「もしこの国がここまで貧しくなかったら、大人たちも違う感じになっていたと思う。
 まあ、この子供たちが大人になるころには、 この国も少しはまともになっているような気がするよ」
KeyWord:『困った日本人の面々』 .....でも誰かの生活の糧にもなっているんだよね
「物価は安いし、ねえちゃんは綺麗だ」
「○▲◇●×◆△■」※流石に書けません
KeyWord:『美しく輝いていたあの頃』 ジェムスア、タオが唄ったベトナム戦争の哀歌
「花は揺れていた。やっと咲いたばかりの小さな白い花。激しい雨がその花を叩く...(中略)
......いったい誰がこの雨を降らせるのか、今日も雨が降っている......(後略)」



書籍ぺーじTopへ

戻ります