#QED.01
『Quod Erat Demonstrandum』

不可解な事件を解決しながら、
桑原祟が隠された歴史の事実を独自に解析していく
『QED - 百人一首の呪』 高田崇史 講談社 1998/12 ♪:☆☆☆
作品紹介 百人一首を巡る謎
希代の天才・藤原定家が残した百人一首。
その一枚を握り締めて、会社社長は惨殺された。残された札はダイイング・メッセージなのか? 関係者のアリバイは証明され、事件は不可能犯罪の様相を呈す。 だが百人一首に封印された華麗なる謎が解けたとき、事件は、戦慄の真相を地上に現す! 〜単行本裏表紙から抜粋〜
感想 百人一首
面白いんですけど、ちょっと難しいです.....事件の謎解きの部分は気にならないですが、 百人一首に関しての考察を掘り進めていく所などは、何度も煙草に手がのびました。
百人一首自体に興味が無く遊んだ事もない私が読んでも楽しめましたから、 百人一首の大会に出るような方や、文系で専攻してる人なんかが読んだら もっと違う見方があるのでしょうが....
KeyWord:棚旗奈々 同じ同業者でも
「御手洗潔と金田一耕介くらい違う....。」
KeyWord:式子内親王 ただでさえ短い命
『たれもこのあはれ短き玉の緒に 乱れて物を思はずもがな』
ただでさえ短い命であるのに、恋に心を乱し、悩むようなことはしたくないものだ。



『QED - 六歌仙の暗号』 高田嵩史 講談社 1999/5 ♪:☆☆☆★
作品紹介 七福神は呪われている
七福神に関する論文は一切禁止する......。
ある大学で起きた七福神を巡る死亡事件。
その裏に隠された真実と歴史に埋もれてしまった謎を....桑原祟が鮮やかに解明する。
感想 本当の意味というモノは常に隠されて伝わって行くのだ
私はニ読、三読しても楽しめました、
私は初読ではちゃんと読まない....というか読めない人なんで。
勿論キチンと読む時もありますが、多くはながらー....
電車ー飯食いー風呂ー寝ーてれびーの合間にちょこちょこ読むという、集中力無い感じで、
しかも記憶力も逝ちゃってるので「あれーこれ読んだかなぁー」という楽しみ方です。

『百人一首の呪』は、正直難しい部分が多くてよく判らなかっのたですが、
こっちはなんとか理解出来ますし。

六歌仙と七福神に纏わる謎、言われてみれば「ああ〜」と思うです。
ウンチクストーリーだとか言う意見は、即座に却下。序盤の....
「大黒天は、不吉だ・・・大きな黒い神、というのはどういう意味なのだ?
 底知れぬ暗黒の闇のことなのか?(略)
 いつも彼に寄り添っている鼠。何故、あんな下等なげっ歯類を従えているのだ?」

「弁財天は、不可解だ・・・何故老人たちの中に女神が一人だけいるのだ?(略)
 普通ならば、琵琶など抱いて澄ましてはいられぬ。琵琶とうのも何か不吉だ。
 それは盲目の法師の持ち物ではなかったか?(略)
 どんな音色を響かせるのだろう、それはきっと淋しく悲しい音色に違いない..........」

「毘沙門天は、不穏だ・・・どうして一人だけ武装しているのだろう。
 しかも、武器を抱えてにこやかに笑っている。(略)
 何故だ?それほどまでに戦いを欲しているのか?」

「福禄寿は、見るからに不気味だ・・・あの、ぬめりとした長い額は何だ?(略)」

「寿老人は、薄気味が悪い・・・(略)彼の手にした巻物には、人の寿命が書かれているという。
 何故そんな物を持っているのだ?それではまるで閻魔では無いか.............(略)」

「恵比寿の笑顔は、作り笑いだ・・・決して本心から笑ってはいない(略)
 彼の過去を考えてみても(ヒルコ⇒蛭子)我々は純粋に微笑む事が出来ぬ......。」
...この辺りで、もう夢中になって読みました。細かい意味は判りませんが(笑)
あーそんな事をキチンとしようと考えて、頑張っている人もいるんだなぁ....とまた感慨した感じの本です。 理解云々じゃなく押されます。
感想(ネタバレ) 「七福神は、全員が鬼や怨霊なのだ」
強引な解釈も多いといわれますが、海外での神の概念と、 日本の仏教に帰依した後の扱いが異なるのは当たり前で、 シヴァを大黒天、サラスバティを弁財天と同じ意味で扱っての論法を云々...... 他の神様を都合のいいように取り入れて解釈を変えるのは神話の得意技ですので 多くの矛盾を孕むのは当然だとも思います。
実際そんな理屈で跳ね除けるのでは無く、整理されて読みやすい傑作だと思います。 何故か書評やミステリランキング等では評価イマイチですね........
応援してます、もっと人気出て欲しいなァ......
KeyWord:桑原祟 .....に縛られた時に。
「憎悪は自己増殖するが、な......」
KeyWord:祟&奈々 何気にナイス・コンビ
「人間と地球の関係と同じではないか。
 人間も今、全く無計画に増えて、地球の命を危うくさせているだろう。
 いみじくもニーチェの言うとおり「人間は地球の癌」なのだろう。
 そんな人間の中に出きる生物細胞なのだから、考えの程度は同じだ。」
  「.....詭弁だ。」



『QED - ベイカー街の問題』 高田崇史 講談社 2000/1 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 「ホームズ」という2700ページの世界
シャーロック・ホームズを愛する人々を「シャーロキアン」という。 今でも物語に思いを馳せる彼らの元に怒る悲劇の殺人事件。

シャーロキアンを巡る事件の裏には、シャーロック・ホームズに隠された真実が見え隠れして...
感想 真実のシャーロック・ホームズ
いきなりですが、私ホームズって読んでないですよね。 外国作品自体が苦手なんです、なんていうか翻訳ものが苦手。 一応子供の頃に、子供コーナーのホームズはちろっと読んだんですが、 正直な話、子供コーナーのホームズは意味ない。 名作だからといって、内用に手を加えて子供用にする意味なんて全然ないですよ。

本編ですが、事件やホームズの謎もさることながら、 本編と関係ない部分で語られる、細かい部分がとても好きです。 祟や小松崎、外島さん等、魅力的な人物も多いですよね.........変人が多いですが(笑) 正直、奈々の苦労っぷりは見ていて楽しいです。

ホームズFANには当然なのかも知れませんが、一般人の私には、 島田荘司さんも言っていた「ホームズは重度のコカイン中毒」を突き詰めた感じの展開は魅せられました。
感想(ネタバレ) 犯罪の天才
「ホームズ?彼はコカインのやりすぎだよ、現実と妄想の区別がつかないんだ。
 元々は優秀な奴だったんだがね......」

「来客の爪が黒く汚れているのを見て、彼は自動車工で身なりがキチンとしてない事から生活レベルは低い...... 単純にダラしない人だったらどうするんだろうね。」

「え?ああ、合言葉なんだ「どうしてわかったのですか?」 と言わないと暴れるんだよ......なんせ身長180cmを越えて立派な体躯を誇るホームズ だろ?暴れると手が付けられない.....」

「身長180cmと言えば、彼が変装・女装の名人だって? そんな馬鹿な!1900年代の倫敦に身長180cmの女性はいないよ、 いたら、それは、....、ホームズ先生の悪癖の一つだろ。 みんな知ってるよ、知らないふりをしてないとね。」

「ホームズ家はそれなりの家系だから、庶民一人くらいボコボコにしたり、 アパートでなんとなく発砲してもいいらしいからね。 それでもあの先生に一抹の閃きがあるのは確かみたいだしね、色々事件も解決してるみたいだけど....変人だよ」

「ワトスン先生が、近くについていて上げないと困るよ、でも先生も大変だね、 義理固い人なんだろうね、あんな変人に捕まってしまって......」

「ああ、でもホームズさんが居なくなって、やっと倫敦にも平和が戻った時は嬉しかったよ、 帰ってきたと聞いた時には落ち込んだね、でも意外だったよ驚いたよ(規制)」
KeyWord:『虹』 祟&奈々、感動しました.....
「でも、そんなことを研究したところで、何かなるんですか?」
「いや、おそらく何もならないだろうな。
 奈々君は、それじゃ時間と労力の無駄使いだと思っているんだろう.....だから、面白いんだ。
 砂上の楼蘭の屋上に屋を架す、といったところだ。その無意味さが面白い」
「・・・・」
「じゃあ逆に聞くが奈々君。無駄でないことというのは、一体何だ?
 この世の営みなんて無駄の連続じゃあないか。
 無駄、という言葉がおかしければ、意味の無いこと、と言い換えてもいい。
 意味も形も無い世界に、俺たちは棲息している。
 諸行無常、諸法無我だ。つまり...........虹だな。」
「虹?虹、って空に架かる虹のことですか?レインボーブリッジのレインボーのこと?」
「ああ、そうだ。奈々君は、虹が存在していると思うか?あるのか、それともないのか?」
「あ、あるに決まっているじゃないですか、この目で見えるんですから」
「どこに?」
「空ですよ、空。雨上がりの眩しい空です」
「その手で触ったことは?」
「馬鹿いわないでください」
「では、音を聞いたのか?匂いを嗅いだのか?それとも味わったか?
 虹がそこに存在しているという事を、どうやって明言できるんだ、見ただけじゃないか?
 では、再び訊くが、虹は存在するのだろうか?」
「つまり...タタルさんの言いたい事は、
 虹はその反射角四十二度の中にいる人にとっては実在してるけれども、
 それと全く同時に角度から少しでも外れた場所にいる人たちにとっては、存在していない」
「そしてその光景を、第三者的に鳥瞰してみれば、虹が見える人も見えない人も、
 彼らの見つめている、中空には、空気と水蒸気と太陽光しか存在してない、ということだ」
「虹という存在が、単独で存在しているわけではない。
 いいえ、むしろ虹は初めからどこにも存在していない、と」
「そうだ、虹はそれを見つめている人の目の中、網膜の上にしか存在しないのだ
 ......では、理解できただろう」

「つまり、シャーロキアンというのは、虹を追っている人間のことなのだ。」
KeyWord:『赤い靴』 祟&坂持
「君は『赤い靴』という童謡を知っているだろう。
 山下公園に、そのモデルとなって少女の銅像もある。あの童謡のモデルになった少女は、
 歌の中では異人さんにつれられて海を渡って行った事になっているが、
 実際は日本で亡くなっている。これも聞いたことがあるだろう
 それでは、あの赤い靴は史実と合致していないという事で、
 歌としての評価を落とさなくてはならないのか?
 全くなんの瑕疵にもならないではないか。それと同じだ」

「『赤い靴』は言霊の歌なんだよ。あの歌のモデルの少女、佐野きみさんは三歳の時、
 アメリカ人宣教師の養女となって渡米する予定だった。
 しかし、その寸前に結核を患ってしまった。そこで渡米が叶わず、
 教会の孤児院に引き取られ、わずか九歳で亡くなってしまった。
 しかし野口雨情の書いた歌詞といえば、『異人さんにつれられて、行っちゃった』
 そうだ。きみさんは、無事アメリカに渡ったことになっている。
 当然、雨情はその史実を知っていた筈だ。何年もたってから、その話を聞いたのだからね。
 つまり、そうあって欲しかったという希望を、言挙げしているわけだ。
 幼くして亡くなった、きみさんへの供養としてね。鎮魂歌だ。」

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