高橋克彦 #浮世絵殺人事件


『写楽殺人事件』 高橋克彦 講談社 1983/9 ♪:☆☆☆★★
作品紹介 謎の画家、写楽
『写楽』、歌麿や北斎と並ぶ代表的な浮世絵師.....彼には謎が多い。
画号のみで、何処の誰なのか本名は知られず、 一年に満たない間に様々な作品を残して消えてしまい、二度と現れなかった。 謎故にまた人を惹きつけるのでしょうが・・・。

現代の浮世絵研究者を巡る殺人事件。
事件と並行して、独自な手法で『写楽』という謎の画家の正体にせまる。
感想 歴史を推理する
殺人事件を扱ったミステリーというよりは、歴史を推理する作品です。
これは、この後の北斎・広重にもいえますが、読み理解するのに 多少歴史的知識が必要な作品です、といっても一人でも浮世絵師の名前を知っていて、 江戸時代の制度について知っていれば十分だとも思いますが。
私は10年以上前に読んだ記憶がオボロゲにあるのですが、 「何がなんだか、わからん!」と言って投げ出しました(笑) 改めて読むと、こんなに面白い本もないという印象です。

浮世絵や歴史に関しての深い考察は勿論、狭い専門世界にあるだろう閉塞感や矛盾の存在に対しても言及され、 主人公・津田の人柄にも惹かれます。
KeyWord:津田良平 津田、西島を語る
「先生は写楽の芸術性は高く評価してるけど、写楽が誰かってことに関心を持ってないんだ。
 誰でもいい。現実に写楽の絵が我々の目の前に存在しているんだから、
 それだけで充分じゃないかって考え方さ。写楽は写楽でしかないって言うことだね。」
KeyWord:国府冴子 冴子的写楽
「東州斎写楽・・・・・東北で写生を楽しむ人」
備考 写楽
寛永六年(1794)五月に現れ、一年に満たない時間を駆け抜けた謎の画家。

当時、浮世絵師というものは、今で思われる「芸術家」ではなく、 一種のイラストレーター的な存在で、大量に刷られた筈の作品が 殆ど残っていないのは、保存環境や条件もさることながら、 浮世絵が消費文化だったという事でしょう。

日本では、無名どころか研究の対称にすらなっていなかったという写楽でしたが、 西洋に輸出される陶磁器の包装紙として浮世絵が使われた事から、 次第に西洋での評価を高めます。
包装紙に使用されている程なので、浮世絵というものは 流行りものであり、風物であったのでしょう。多くは春画・秘画でもあったともいいます。

ゴッホやセザンヌにも影響を与えているといわれる写楽ですが、 歴史的評価の分岐点は1910年、ユリウス・クルトが著書 「SHARAKU」を発表した事だといわれます。 これを機に、写楽は世界三大肖像画家の一人となり、日本での評価が急速に高まります。
『写楽』、正確には『東州斎者楽』・・・彼は謎の画家です。

当時の江戸の浮世絵世界というものは、それほど広くはない。これは間違いないでしょう。 絵師は当然ながら、挿絵などで文を書く人との交流もあるようで、 様々の絵師の多くの記述が残されているようですが、写楽に関しては少ない...... それどころか、彼は交流自体が無いと思われる状態のようです。 何らかの理由で、隠れる必要があったのか、精神的な問題なのか、永遠に謎です、今から出てくる証拠などあまり信用が出来ないでしょう。

デッサンの狂い、当時に合わない画風。
作品中では、写楽は人気作家ではないかとなっていますが、 デビュー当時、何故名もない新人作家に蔦谷(出版元)が力をいれたのかは、色々な説があるようですが謎も残ります。、 後期の作品は、画風が凡庸になったと言われますが、これほど短期感に画風が変わるとも思えないので、 これは蔦谷側の指示だと、私は思っています。
そして、写楽は消えてしまいます........

今、写楽の作品を見て、率直に感動する人は少ないのではないでしょうか、私はそうです。
一種のコミックアートのようにも見てしまいます。時代による差や環境、景観の違いもあるのでしょうが、 かつては一般的に親しまれたであろう浮世絵が、今の日本の生活の中ではむしろ異質な文化だとさえ普通に感じます。

これはゴッホやもダビンチのような有名な画家にも言える事だと思います。
あれは昔の作品です。 ゴッホは当時はゴミのような画家でしたし、ダビンチは正確には科学者でしょう。 彼らの描いた絵は現在世界に存在しないので、それを見る事の出来る人もいませんが。

素人考えなんで恐縮ですが、元々100年後を想定した描かれた作品では無く(ある筈もない) 当時の江戸にこそ合ったもので、 今の私たちは、良い悪いではなくまだ自分がいなかった昔を思う為の鍵。 私にとってはそういうものです。

『写楽』は謎。私はそれだから好きです。
これからの世界は、映像や色々な意味で、様々な記録が残ってしまうのでしょう。
それはいい事だと思いますが、少し淋しいです。
公的機関で情報を管理し、同時に全てを公開する時代も、いづれ来るのかも知れません。 これは決して悪い事でも無いのでしょう。

でも、私は、まだ、そうでない時代の、好奇心を刺激するミステリーとともに、
「謎は謎のまま」だから、知りたいと思う。
正解が用意された謎は謎でも何でも無い。永遠に必ず、絶対解けない謎にだけ価値がある。



『北斎殺人事件』 高橋克彦 講談社 1986/12 ♪:☆☆☆★★★
作品紹介 葛飾北斎
『写楽殺人事件』から数年後、 津田の元に義兄の遺稿でもある「北斎隠密説」の仕事が持ちこまれる。 調査を進めるうちに塔馬双太郎らと出会う彼は、 再び浮世絵を巡る殺人事件に巻きこまれていくことになる。
感想 北斎隠密説
北斎に関する考察はもちろん、推理的な部分や人間ドラマ的にも傑作ですね。 江戸時代の庶民感覚の部分もあじわってみれますし。

ところで北斎は他に主な画号として、 春郎・宗理・辰政・戴斗・画狂人・卍。などがあるのですが、 沙村弘明さん、北斎好きなんですね(笑)
KeyWord:??? 執印摩衣子 ------
「君がもし独身で、私のことをちょっとでも好きだと言ってくれたら.....君を殺していたかもしれない」
KeyWord:塔馬双太郎 歌麿殺人事件を起せ(謎)
「君がどんなに必死になって北斎隠密説を打ち上げようと、このアパートの隣に住んでる人間さえ読んでくれないんだ。
 相変わらず北斎は貧乏で絵だけにしか興味を持たなかった、偏屈なじいさいというイメージを持ったまま死んでいくだろう。
  このことで浮世絵の印象が悪くなったり、また、よくなったりもしない。それこそ無駄な心配だよ。」

「北斎は確かに履歴や行動を嘘で固めた。
 しかし精神だけは誤魔化すことができなかった。だから印象に変化が無い。
 絵に対しては真剣にぶつかり、人に対しては素直に怒りや喜びを表した。
 仕事を隠す事と、心を表すことは別なんだ。我々は元々本当の北斎を知っていたのさ」
備考 葛飾北斎「人魂で行く気散じや夏の原」
1760年江戸に生まれる。
生涯30に及ぶ引越しを繰り返し、何度も画号を変え、90歳で没する。
代表的な作品は「冨嶽三十六景」「北斎漫画」など。

写楽とは対称的に70年間も創作活動を続け、江戸時代を代表する画家。

常に自分を変化させ、意欲的な創作活動を行った人物として、 絵画以外の部分からも、彼を崇拝・尊敬する人もおおい。



『広重殺人事件』 高橋克彦 講談社 1989/ ♪:☆☆☆★
作品紹介 広重暗殺説
浮世絵殺人事件三部作の完結編。
「東海道五十三次」などで有名な画家・安藤広重
彼は幕府に暗殺されたのではないかとう謎を追い....
感想(ネタバレ) ・・・・・・・・
広重の謎とかは面白いです。
ただ......この展開はちょっと悲しすぎますよ.... 津田さんは浮世絵が本当に好きで、真摯に取り組んでいたのに、 あまり恵まれなかった...それどころかトラブルに巻き込まれっぱなし。 さらにこの展開.....あまりにも不遇です。 最後の手紙を読んでる時なんて泣きそうになりましたよ.....
作者の悪意すら感じました。塔馬さんが津田さんと出会え、 津田さんが塔馬さんと出会えた...それで良しとするにはあまりにも悲しい。
KeyWord:塔馬双太郎 歌麿研究家
「好きな相手がいるだけ幸せってものさ」
備考 安藤広重
1757年生まれ、火消し同心をしながら浮世絵の仕事に携わる。
「東海道五十三次」を発表後、一躍売れっ子画家に。
生涯北斎をライバル視し、明治寸前の1858年に没。
※↓ 2001 7/31改訂
「東海道五十三次」には元絵があるという説もありますので興味のある方は是非。 広重は、司馬江漢(1747〜1818)の画帳を元に「東海道五十三次」 を描き、実際には東海道を旅してはいない、というものです。
ちなみに、仮に元絵があるからといって否定の材料にはならないでしょう。
誰が言ったかは忘れましたが「全ての芸術は、模倣から始まる」のですから。

・『広重「東海道五十三次」の秘密』 對中雲如・著 祥伝社
・『ZERO』 Vol.20 〜司馬江漢....もう一つの「東海道五十三次」〜


上記の説に関ししですが、どうやら誤りのようです。
指摘してくださった 『WEB浮世絵』 さんにはご迷惑をおかけしました。
またWEB浮世絵さんに紹介して頂いた 「歌川広重と司馬江漢、東海道五十三次」の矛盾目次なども興味のある方は是非拝見してください。

削除せず、以前の文を改訂して更新したのは、新聞報道もされたこの記事が有名なのと、 興味を引きやすいセンセーショナル内容な為に注目されながらも、その後一般的な意味での報道がないこと。
・・・そして誤説とはいえ私自身、面白いことは面白いと思ったためです。
こういった論理・考え方もあった、ある。仮に捏造されたものだとしても、です。

この件に関しましては、私見としては模倣であろうとどうだろうと、 その価値を落とすものではないとは思っていますが、 事実とくい違う部分で「模倣」と呼ぼうとした行為に関しては、謝罪させていただきます。



『ゴッホ殺人事件』 高橋克彦 講談社 2002/5 ♪:☆☆☆
感想
ゴッホほど著名な画家はいない・・・ってのは本当だとも思います。
不思議なもので、図画工作から美術の時間までよくいって放蕩、悪くいえば自堕落な自分でも多分 小学生くらいからその名前だけは知っていたと。

名前だけ。人の好みはサンサ万別、 知らないだけだとしても、自分も人が 知らないというけど、いいと思う何かがあるので、 。反発的な意味合いで捉えられるのを怖れますが、 ゴッホという不遇の生涯(と)を終えた後、 急速にその名が高まり、今や・・・・の感想。

じゃあゴッホってのが誰でどんな作品を残したか、とか聞かれるとサッパリわかりません。 バブル期に何処かの企業がエライ大金はたいて買ったのが話題になった程度しか不明。
ひまわり・アルルのxxxとか。あるらしいすね。 ひまわりは、ゴッホは太陽の画家といわれてもいるそうですが、 代表作ひまわりとかみると、素人は「これが太陽?」と思うでしょう。 アルルの・・も。
日本の子供に太陽を描かせると赤系で描き、 別の国の子供では、黄系で描くときいたことがあります。 しかし、私にとってはこれは太陽 「この太陽は夜も輝いて」 とりは地を歩き、海は空を流れ、沈むな騙し、側で頷いた。 この太陽は夜も輝いて、夢を見る・・・・(c)xxxxxx そして急ぐ君の目にやきついて離れない、 そんな、太陽の暗黒面。

そして率直にいえば「資産価値抜0と考えるなら、ゴッホの作品を貴方にさしあげましょう」といわれればたぶんいりません。
ゴッホの絵をみてもそんなに何かは・・・「これがゴッホか」とかしか、憶えない。そういう前提での感想です (ちなみに本物つーのみたことあるので)。
上手い下手で論じるものではないのでしょう。 好き嫌いでいえば別に好きでも嫌いでもない。 でも自分にはよく判らないものが「あれは凄い」「うんうん」とかいわれてて、 ○○億とか値段ついてるのって、自分には無関係な城の上のシャチホコみたいなもんだとしても、 なんかオモシロクナイ。げせないのですよ。
有名所しか知らないので例えばダヴィンチのモナリザとかはまだなんとなく判るのですよ。 そりゃパッと見た目以外の部分で、何100年も前に誰かが描いた絵。 世界中の人が知っていて、オリジナルとは全然

ピカソとかも「これが○○円!?」と貧乏人のサガとして 金に換算する心理からすると妙、理解できないものではあるのですが、 ピカソって有名じゃない絵とかたまたま見たら(写実的なやつ)激烈に上手い!とか思ったし。
余談すが、ピカソの有名な絵ゲルニカは某レストランの壁にデカデカと(原寸か) あり「食いもの屋に飾る絵じゃねぇな・・・」と。TPOを柔軟に使わせて頂ければ、 それをボーダーにいれるかどうかは、

さて、この物語の中では、ゴッホは「誰にでもわかる」とかかれています。

@ゴッホの自殺について 例えばピストルの謎とか、 自殺で腹をうつか、とか。 自殺で腹をうつ行為に関していえば、 ゴッホって他者の関心を引くのがすきな傾向高め。 自殺するのかしないのかは、ともかく、自分で腹を撃った、ってのは自然に納得できると思うので、 言及されてないだけでは、耳ソリの。
普通は自殺しようと思う人間は、腹をうつかい?ってのが何度もでてて、 読んでると「そのとーりだ」とか思うのですが、 自殺するつもりなくても死んだ人間、つまり、「決意の自殺」ってのは少ない、 衝動・遊びとしての延長が自殺・・・・・なんで、 この件に関しては
Aゴッホの作品が何故評価されなかったか? 自分も理解してないので、 ただ、作品中の主張を読むと「なるほど」とか思うし、 でも、それは少し違うように。 ゴッホ程、死後急速に評価の高まった それは、一重にいえば本人の問題であり、 評価、とはちがうような。 そもそも、本当にただ一枚の絵、資産価値としての評価。 ではない、理解だとしても。 資産としたなら、 ケバイ。漫画とかで育ったもで、単色に近いただの @は


海外旅行に美術館に行くのは日本人だけ、だけど実際には 美術の本は全然売れない。 美術が好きなわけではなく、かといえ嫌いでもなく、たんに出来事がすきなんだと思う。 たんにおはなし。
週刊・天然記念物、恐竜、宇宙の仕組み、・・・ 対岸の火事のことを、知ってみたい。
塔馬



ゴッホ。変人ですよね。 ただ、天才であったかというと、私には判らない。 それは一部の理解ある人にしかみたされない。 彼が生きている間、 彼が死んだあと、 その二つの違い。 なんで、こんなに違うのか。 私は思う。





そんな、心の蟠りを解き解してくれるのか、と思って読んだのですが、 正直いえば興冷め。 浮世絵・・・を読み終えた時に感じたような気持を全然感じなかった。 理屈が合うどうこうではなく、 私はこう思ったんだ!みたいな。 真実なんざ、もう永遠にわかりませんよ。タイムマシンでもない限り、 だからこそ、の何かがなくって、浮世絵シリーズ、 全然理屈なんざわかりませんが、なんか圧倒的な何かがあった。

ゴッホは浮世絵に興味を持っていたという。 それと同じで、xxxxは、ゴッホに興味を持っていた、ト思った。
感想
KeyWord:
「」

書籍ぺーじTopへ

戻ります