「音道の折り曲がり部分をコルクシートで曲面化処理すると、解像度の上がった美音が得られます」
と、そんな手が届かないところの話をされても、全然、役に立たないゾ。
そんな声が聞こえてきそうです。
そこで、ユニットを外せば、手を突っ込める空気室をコルクシートで曲面化処理する話を始めましょう。
スロートに続く180度折り返しは、D−55スタイルが抱える最大の問題点の一つでしたが、空気室をどのようにデザインするかは、スワン型を含む、BHが共通して抱える悩みの種です。その悩みとは、具体的には、次です。
(1) ユニットから見て、 空気室が非対称であると、
コーンが同心円状に振動しにくい
(2) 直方体の(平行面をもつ)空気室は、定常波が生じやすい
例えば、D−55スタイルでは、空気室の上側は広く拡がる音道に続いており、その一方、下側はどん詰まりです。
このようなケースでは、ユニットフレームの通気口の上側が下側より大きくなっているものと見なせます。
と、いうことで、コーンが同心円状に動きにくくなっていることを容易に理解されるでしょう。
スワン型では、ネック(スロート)以降とは独立にヘッド(空気室)をデザインできるので、いくつかの成功例がありますが、
縄文人が粘土のドーナツを重ねて壺を作ったのと同じ手法で、ドーナツ状の積層板から作った球状の空気室をもつカネゴンさんの
「KD−S10000」、
そして、コエフさんの
「八角堂」が、その双璧として挙げられるでしょう。
カルイ、ヤワイ、ヤスイを特徴とするコルクシートを用いた空気室の曲面化処理は、果たして、
オモイ、カタイ、タカイを特徴とするフィンランドバーチやシナ・アピトンを用いたBHを一蹴できるでしょうか。
この曲面化処理の片鱗は、Shuksさんの
「天野邸訪問記」に見えます。