AMANO'S
超・究極のBH
瘋癲狼藉帖
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September
2002
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Sep-25-2002
電源 (何で今頃)
はずかしながら、電源周りが音にかなり影響することを、ほんの3ヶ月前まで、意識しませんでした。
 
約40年前、真空管アンプを自作したときは、整流管を使わずに、まだ一般的でなかったシリコンダイオードを採用したり、格上のパワートランスを奮発したりしたこともありました。また、2,3年前、Dos/Vに嵌り、スーパーπで鎬を削っていた頃は、ETASISで電源を固めたこともあったというのにです。
柱上トランスから拙宅の分電盤まで約40m、 そこからオーディオ用の独立回路を2本用意してあったことに安心し、油断に繋がったのでしょう。
 
電源の重要性に目覚めるきっかけは、徹底した自作派のAE86さん宅(6月23日)とハイエンド派のShuksさん宅(7月16日)への訪問です。お二人のオーディオに対するスタンスは異なりますが、電源に対するコダワリはハンパではないようです。
 
長岡先生は電源周りの研究でも大きな業績を残され、これを元に、多くの方が自作をされたそうですが、それは、遠い昔のことではありません。
音元出版 ”不思議の国の長岡鉄男(1)” 145〜168ページ(2001年)
  「電源ケーブル交換によって音質は向上するのか」
    (1998年オーディオアクセサリー88号から転載)
  「長岡流ハイCP電源ケーブルの自作にチャレンジ」
    (1998年オーディオアクセサリー89号から転載)
  「”方舟”専用の究極の電源ケーブルが完成」
    (1998年オーディオアクセサリー90号から転載)
  「長岡鉄男の方舟電源漂流記」
    (1999年オーディオアクセサリー増刊:電源&アクセサリー大全から転載)
「電源ケーブルは奥が深い。というより、いわく不可解」
という言葉を先生は残されていますが、しばらく、電源周りについて触れてみようとおもいます。
 
「何を今更」
と、言われないように、小さくても、新しいことを加えるよう心掛けましょう。
 
なお、作業は、必要に応じ、電気工事を業とする甥の監督、監視、検査、協力、助言等を受けながら行っております。
 
Sep-18-2002
空気室を曲面に (コルク処理の特徴と留意点)
これまで、約3ヶ月間、音道の折り曲げ部分と空気室をコルクシートを使って、曲面化処理する実験をしてきました。s-ultra III をバラした回数は30回を超えるでしょう。一部の象徴的な結果を速報的に報告しましたが、ここで、そのコルク処理の特徴と留意点を概括しましょう。
 
特徴:
(1) コルクシートの物性
    吸振性、吸音性で、自らは鳴かない。
    一定の厚さを保って曲面を形成する。
    カルイ、ヤワイ、ヤスイことは、
    オモイ、カタイ、タカイ シナ・アピトンやフィンランド・バーチと対照的。
(2) 作業性
   カッターナイフやハサミで、所望の形やサイズにカットできる。
   荷造り用布テープでシッカリと固定できる。
   容易に取り外せる。
(3) 最適化
   処理する位置、形、サイズを細かく変化できる
   (これが、実は、最大の特長と考えています)。
(4) 音の変化
   空気室を曲面化処理すると、解像度が増す。
   具体的には、楽器の種類の数が増える、トゥィターが綺麗に聞こえる、
   余韻の時間が長くなる、ヴォリュームを上げてもうるさくない、
   立ち上がりが早くなる、などの効果が挙げられる。
   音道の折り曲げ部分を曲面化処理すると、空気室の場合に加えて、
   低域音の芯が増強する。
   ウール系吸音材と比較すると、音の鮮度が落ちない(大人しい音に
   ならない)ことが、際だって、相違する。
 
留意点
(1) 経時変化
   2,3日は、音が変わる
   (コルクシートの弾性で、元の平面に戻ろうとする力が残っているためか)。
(2) 耐久性
   未知だが、ブチルゴムテープ介して二枚にする方が無難。
(3) 処理サイズ
   見た目で、完全に滑らかになるサイズより、小さめにする (処理自体、
   空気室容積や音道断面積を減らすので、このマイナスも要配慮)。
 
コルクシートによる曲面化処理は、全く新しい技術です。先入観や過去の経験にとらわれず、ここはと思うところ(音がぶつかる壁・たまり場など)に、躊躇せずにトライしてみましょう。
私は、空気室の上側を処理するとき、曲面の片側が隔壁で閉鎖されずに開放しているので、どうかな、と思いましたが、空気室下側の両端が閉鎖している処理より、効果が大でした。
また、次の写真のように両端が開放していても効果があります。このケースでは、空気室の容積を減らす度合いは小さいのかも知れません。
コルクシートの界面は、音波の進行方向をコントロールしますが、コルクそのものは吸音性があります。
この曲面化処理で、音の鮮度が落ちないということは、コルクが吸収する音の周波数や飽和吸収量が、ウール系吸音材の吸収態様と異なっているからでしょうか。
共鳴管、音響迷路は当然ながら、密閉型、バスレフ型など、他のスタイルへの応用が楽しみです。
 
”Shuks”さんが、コルクシート処理の実技を、独自の工夫を加えて、
「AUDIO 雑記帳 D-55ESのチュ−ニング」のページに公開されました。
 
Sep-11-2002
空気室を曲面に (how & where)
回りくどい話と why は省略して、箇条書風に、サラサラと急ぎましょう。
 
材料 : コルクシート(2mm厚 ; 450*300mmで500円位)
     荷作り用布テープ(50mm*25mで400円位)
 
道具 : カッターナイフ
     曲尺(長い方が50cmあるとコルクシートが一度で切れる)
     ベニヤ板(コルクシートを切るときのマナ板 ; 長辺は50cm以上)
 
方法 :
(1) コルクシートを切る(450mm*空気室の奥行き)
(2) この帯状のシートを所望の長さで切る
(3) 空気室の奥行きにあわせた辺に、予め、布テープを貼る
(4) 空気室の隅から上記長さに応じて滑らかな曲面を与える位置に線を引く
(5) その位置に固定する
D−55に応用する場合、最初は
(2)の所望の長さは、100mmを
(4)の位置は、64mmを推奨します
この処理で、解像度の向上や歪み感の減少など、なんらかの効果を、聴感上、認めたら、所望の長さを種々変更して、各自の好みにあった最適化をしましょう。
もちろん、なんの効果も感じないときは、簡単に、元に戻せます。
 
処理箇所 : 空気室の上側(写真:左)、下側(同:右)
コルクシートを固定する位置を指示する線を引くには、こんな定規を用意すると簡便です
(所望の長さが100、90、80mmのときに、それぞれ、64、58、53mmを用いると、滑らかな曲面ができます)。
この曲面化処理をすること自体、空気室の容積を減少させますが、その影響(高域がきつくなる)の対処は、別途、考えましょう。
 
この曲面化処理を最初に目にされた”Shuks”さんが、東急ハンズで、コルクシートを購入されたそうです。
いずれ、達意な表現で、その結果が報告されると思います。
 
BHの音道の折り曲げ部分、空気室と続いたコルクシートを用いる曲面化処理は、単に、BHに限定されるものではありません。密閉型やバスレフ型など、一般的なSPに適用できる、汎用性の高い技術となるでしょう。
ハコの内外の曲面化は、これから普及する有力なデザイン手法の一つです。
B&W社のNautirus 801に比肩する性能をもつSPを、極めて簡単に、手にすることが、夢ではありません。
 
「シトさんの示唆」が、とてつもない方向にも発展しそうな気配です。
 
Sep-07-2002
空気室を曲面に (僕は吸音材が嫌いでさ)
長岡 :
   「僕は吸音材が嫌いでさ、スピーカーを作るときだって、吸音材使わない」
江川 :
   「おれも吸音材は嫌いだよ」
      音元出版 ”不思議の国の長岡鉄男(2)” 13ページ(2002年)
      「激突 !! 江川 vs 長岡 クロス対談」(1989年 AVレビュー 23号から転載)
1989年に発表したD−55を「究極のBH」と自称したのには、
「このスピーカーを聴いた後は他のスピーカーは聴く気がしなくなる」
ほどの性能を発揮したことに加えて、吸音材を、全然、使わなかったことも寄与していたでしょう。
 
何故、吸音材を省略できたか、それは、こう考えました。
空気室を見ると、マグネットの上下左右に、補強材(板取図で2,5,6,7)が入っています。これらが定常波を抑えているのだ、と。
 
s−ultra の二代目(1997年)では、この補強材に目をつけ、同様に、吸音材を省略できました。ところが、FE208SSの出現です。
こいつには、難儀をさせられました。
 
(1) 上記の補強材をノミで削る(写真:左)
(2) 空気室の4隅を木片で曲面化処理する(写真:右)
(3) ユニットを45度回転して装着する
 
こんな対策(他にもありますが)で、なんとか凌いだつもりです。
そうです。お察しのとおり、手間のかかる木片に代えて、コルクシートで、手軽に、空気室を曲面化処理しようという目論見です。
 
Sep-04-2002
空気室を曲面に (BHの泣きどころ)
「音道の折り曲がり部分をコルクシートで曲面化処理すると、解像度の上がった美音が得られます」
と、そんな手が届かないところの話をされても、全然、役に立たないゾ。
 
そんな声が聞こえてきそうです。
そこで、ユニットを外せば、手を突っ込める空気室をコルクシートで曲面化処理する話を始めましょう。
 
スロートに続く180度折り返しは、D−55スタイルが抱える最大の問題点の一つでしたが、空気室をどのようにデザインするかは、スワン型を含む、BHが共通して抱える悩みの種です。その悩みとは、具体的には、次です。
 
(1) ユニットから見て、 空気室が非対称であると、
   コーンが同心円状に振動しにくい
(2) 直方体の(平行面をもつ)空気室は、定常波が生じやすい
 
例えば、D−55スタイルでは、空気室の上側は広く拡がる音道に続いており、その一方、下側はどん詰まりです。
このようなケースでは、ユニットフレームの通気口の上側が下側より大きくなっているものと見なせます。
と、いうことで、コーンが同心円状に動きにくくなっていることを容易に理解されるでしょう。
スワン型では、ネック(スロート)以降とは独立にヘッド(空気室)をデザインできるので、いくつかの成功例がありますが、
縄文人が粘土のドーナツを重ねて壺を作ったのと同じ手法で、ドーナツ状の積層板から作った球状の空気室をもつカネゴンさんの「KD−S10000」
そして、コエフさんの「八角堂」が、その双璧として挙げられるでしょう。
 
カルイ、ヤワイ、ヤスイを特徴とするコルクシートを用いた空気室の曲面化処理は、果たして、
オモイ、カタイ、タカイを特徴とするフィンランドバーチやシナ・アピトンを用いたBHを一蹴できるでしょうか。
 
この曲面化処理の片鱗は、Shuksさんの「天野邸訪問記」に見えます。
     
 
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