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──長らくオカルトハンターを生業としている以上、大概の超常現象には慣れているつもりだ。
幽霊は元よりヴァンパイアやワーウルフ、ウェンディゴ、シェイプシフターと言ったクリーチャー類とも対峙したし、
精霊
やカカシに宿ってアメリカまでやって来た他国の土着神、死神、トリックスターみたいな、ある人々にとっては神である存在とも戦った。悪魔に至ってはむしろ顔なじみと言ってもいいようなものだ。人外の魔物だけではない。この仕事は妙な人間たちとの関わりも多く、魔術を操る人間もいれば、超常の力を持つ人間もいたし、サディストな殺人一家と出会ってあやうく殺されそうになったこともある。
しかし。
年齢の割に百戦錬磨のサム・ウィンチェスターとしても、ある日突然、自分の泊まっているモーテルを訪ねてきた男が、頭の上に動物の耳(たぶんネコ)を付けていて、しかも、「お前に惚れたから、俺と結婚してくれ」と朗らかにプロポーズしてきた──などという目にあったのは生涯初めての経験だった。
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