For a long time おまけ文 〈秋好さんバージョン〉
「それじゃ、早速支払いをさせてもらうよ」
 そう言ってブラッドは、もうすっかり熱くなっている腰をメリックに押しつけた。
「そんなに焦るな、ブラッド」
 メリックはブラッドの顔を押し戻そうとするが、この期に及んで待ってなど居られるものか。
「待てったら、ブラッド!まだ、機材の準備が…」

 …機材?

 機材って何だ。何か新しいプレイだろうか。メリックは、あまり妙な小道具を使うのは好まないのだと思っていたが、嗜好が変わったのだろうか。
 気持ちに余裕がある時ならそういうのも悪くないが、今は、一刻も早く繋がりたくて、服を脱ぐのももどかしい。
「そんなの、どうでもいいだろ。なあ?早くやろうぜ…」
「駄目だ。きちんと採取しないと…」

 …採取?って、何を?

 ブラッドの顔に立て続けに疑問符が浮かぶ。

「ただ出せば良いというわけではない。しかるべき機材を使って、適切な温度管理で冷凍保存しておかないと、使い物にはならないから…」
「…ちょっと待った、ヘンリー。一体、何の話だ?」
 メリックの言葉を遮ってブラッドが訊ねると、メリックは至極当然のような顔で答えた。
「もちろん、君の精子の話だが?」
「…え?」
 
「治療費は、君の体で払うんだろう?人工授精用の精子売買はどうかと思うが…研究用としてうちで買い取ろう。それから、体細胞の提供と、新薬実験の被験者と…」
 指を折りながら立て続けに話すメリックに、ブラッドはついていけない。さっきまで良い雰囲気だったはずなのに、どうしてこんな話題になっているのか。
「え、だって、『体で払う』ってのは、そういうことじゃなくて、つまり…」
 しどろもどろに言うブラッドを、メリックはあっさり切り捨てた。
「…もちろんそれもあるが、…それだけで全額払いきれるのか?」
 ブラッドは言葉に詰まった。

 ハンサムなハリウッドスターとの一夜のためならば、百万ドル払っても惜しくないと言う人はいくらでもいるだろう。だが、定価など存在しない商品の話なので、相手が合意した金額でしか取引は成立しない。
「君とのセックスに価値が無いとは言わないが、…君にとって私は、抱く価値のない相手なのか?」
「そんなわけないだろう!」
 ブラッドにとってメリックは、何物にも代えがたい唯一無二の恋人だ。それを金銭的価値に置き換えることなど出来ないけれど、今の莫大な全財産をなげうっても惜しくないとすら思っている。

「それならば、君の体の価値から、私の体の価値を差し引いて、相殺して…」
 ついにメリックは電卓まで取り出して計算し始めた。
「仮にこの先毎日セックスしたとしても、アメリカ人の平均寿命から計算して残りの日数は…」
 ブラッドは蒼白になった。この計算では、あと何十年どころか、一生かかっても返せないかもしれない。とんでもない多額債務者だ。

「…わかったよ、ヘンリー。これから毎晩、何度だって『支払い』するし、もし俺が死んだらあんたに献体するから、解剖するなり実験するなり好きにすれば良い。だから、とりあえず…」
 ブラッドは、すっかりどこかへ行ってしまった色めいた雰囲気を取り戻そうとするように、メリックの耳元で甘く囁いた。

「…今夜だけは、貸し借り抜きでやらせてくれねえ?」
 

…終わり。
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2006.02.15




〈ご本人のコメント〉
しかし、よく考えたら上の話の血さん、 さりげなく「一生傍に居る」「毎晩やらせてもらう」許可貰ってますよね… 羨ましい…(笑)。
もしメリック先生が「今日は疲れてるから嫌だ」って言っても 「返済はきちんとしなきゃ」ってことで押し切れますよ!
そう考えたら結構お得だなあ…。

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秋好さま、どうもありがとうございました!
笑わせていただきました〜。
血さんに深い同情を覚えずにはいられません…。
とりあえず、メリック先生、ハリウッドのトップスターで新薬実験はやめてください(笑)。