スラム街の少年が父親殺しの罪を問われたその裁判で、少年の有罪は明らかなように思われた。
しかし、12人の陪審員のうち、陪審員No.8だけが
「少年を有罪とする根拠には疑問がある、もっと議論してやるべきだ」
と主張して一歩も譲らない。 そしてそれは、初めは多勢に無勢だったが、やがて他の陪審員たちを一人ずつ動かしていく。
果たして判決は?
ほとんど最初から最後まで部屋の中だけで話が進む。
陪審員たち一人一人が(わざとらしいぐらいに)個性豊か。
そのぶつかりあいが緊迫感を生んで、最後まで目が離せない。
すごいなー。 脚本の力ってこういうもんかなー、と感心した。
それからカメラワークもすばらしいと思う(良くわからんけど、たぶん)。
マイペディア97で遊んでいたら、監督が「評決」と同じ人だと書いてある。 あ、ホントだ。
監督のSidney Lumetは本作がデビュー作とのこと。
陪審員No.8をヘンリー・フォンダが、最後まで有罪を主張する陪審員No.3をリー・J・コッブが演じる。
最初はNo.8対他の全員だったのがやがてNo.8とNo.3の対決の様相を呈していくんだが、この二人のみならず他の陪審員たちもそれぞれ印象深い。
株の仲買人のNo.2とか。
それにしても、とこの映画を観て思ったのは、陪審員制度ってやっぱり陪審員の偏見とかが紛れ込んだりするだろうから、そういう点はちょっと怖い。
もし日本に陪審員制度があったらどうなるか……ということで思い出したが、確か「12人の浮かれる男」という舞台劇が筒井康隆作品の中にあったと思う。
題名はもちろん本作のパロディだろう。
聞いたところでは、無罪と思われた人物を無理矢理有罪にしてしまう話だとか。
読んだこと無いけど、そのうち読んでみようかな。
なお、本作は裁判モノだが、推理モノではないので、別に意外な真犯人が出てきたりはしないし、結局最後まで事件は解決せずに映画は終わってしまう。
うっかりその点に期待して観てしまうと裏切られるので注意。
しかしとにかく面白い。
もともとTVドラマだったのを、ヘンリー・フォンダが惚れ込んで映画にしたらしいけど、気持ち解るかもなぁ。
モノクロだし、陪審員の設定も全員が白人男性という近年の映画なら考えられない構成なんだけど、いつの時代に観てもきっと手に汗握ってしまう作品。
1997-09-02