12人の優しい日本人

Data

監督
中原俊
脚本
三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ
出演
塩見三省, 桐島一之, 上田耕一, 二瓶鮫一, 中村まり子, 大河内浩, 梶原善, 林美智子, 豊川悦司, et al.
公開
Japan, 1991

Story

21歳のヤンママが別れた夫殺しの罪を問われたその裁判で、やる気の無い陪審員たちは「いいや、無罪で」ということで済まそうとしていた。

しかし、12人の陪審員のうち、陪審員No.2だけが
「こんなに簡単に無罪にしてしまっていいのか、ちゃんと話し合いましょう」
と主張して一歩も譲らない。 そしてそれは、やがて他の陪審員たちを一人ずつ動かしていく、のだが……。

果たして判決は?

My comment

もしも日本に陪審員制度があったら。 というコメディ。

言わずと知れた「12人の怒れる男」のパロディで、状況のみならず展開までなぞっている。 手洗いの場面までパロっているのには笑ってしまった。

かと言って単なるパクリかというとそんなことはない。 議論の流れや事件の分析には独自の趣向もある。 登場人物の設定もちょっとひねってある。 そして何より、登場人物の過半数が議論下手で、言うことがいちいち感覚的なのだ。

この「議論下手」の辺り、普通の日本人を無作為に12人集めたらいかにもこうなるだろうなという様子がうまく描かれていて、妙におかしい。 元ネタの方は、これよりはもっと論理的だったもんなぁ。 日本の教育制度でもディベートをもっと重視すべき、とか思っちゃった。

一方で、陪審員同士が意見が噛み合わないながらも互いを思いやるところも見せたりするのが、また日本的。 タイトルの「優しい日本人」というのはこういうところを指しているんだろう。

とにかく、あるときは謎解きが一歩進んだかと思えば、次の瞬間にはなんかもう議論にも何にもならなかったりするんだが、
「とにかく、話し合いましょう」
をキーワードにとにかく話し合うのである。 これで一本の映画として成り立ってしまうのは、元ネタの良さもさることながら、脚本の力のなせる業だよなぁ(って、元ネタの方でも似たようなこと書いたな)。

出演者は陪審員12人に加えて守衛とピザ配達のたった14人。 トヨエツ、セリフまわしは一番ヘタだと思う(いまにもセリフかみそうだ)けど、観終わったときの印象は最初思ったよりずっと良かった。 しかしこの好印象は役柄のせいもあるかな。

劇中に出てくる「ドミソピザ」はきっと「ドミノピザ」がNGだったんで変えたのだろう。 しかし「アルトマン」と「貴花田」「若花田」はOKだったらしい。 「貴乃花」「若乃花」ではないところに時の流れを感じてしまった。 それにしても
「貴花田と若花田、どっちが先に横綱になるか」
という話題で決を採る場面には大笑い。 正解は、言うまでもなく「貴」の方なんだが……(劇中でどうなるかは観てのお楽しみ)。

1998-09-12


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