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そう結論が出たのが朝の6時だった。 それから僕はネットを参考にしてドライブ計画をたてて、美味しいお店とかフランソワーズが好きそうな雑貨の店などをピックアップした。 僕はまっすぐキッチンに向かった。
「おはよう、フランソワーズ。・・・あれ?」
「おはようございます、博士。ピュンマ。あの、フランソワーズを見ませんでしたか」 ピュンマが天井を指す。
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―4―
「・・・フランソワーズ」 ノックとともに声をかける。中から微かな声でどうぞと聞こえたので、僕はドアを開けて中に入った。 「フランソワーズ、今日だけどさ――」 僕は声を失った。 「あ、ジョー」 フランソワーズは真っ赤な顔をして寝込んでいた。頭の下には氷枕。 「フランソワーズ、いったいどうしたんだい」 僕はといえばなんとも馬鹿な質問しかできなかった。 駆け寄って顔を覗きこむ僕に、フランソワーズはにっこりと笑ってみせた。 「風邪ひいちゃったみたいなの、うつるから、あまり近寄らないほうがいいわ」 そう言って僕の肩を押した。 「さっき博士が検査してくださって、インフルエンザではないみたいだけど・・・」
せっかくの誕生日なのに。 僕の「フランソワーズの誕生日計画」は水泡に帰した。外出するなんてとてもじゃないけど無理だ。
「――参ったな」 フランソワーズをそっと寝かしつけて、僕はベッドサイドにひざまづいて彼女の髪を撫でた。 「参ったって何が・・・?」 フランソワーズは微笑むと、目を閉じた。
僕がそんなことを考えながらフランソワーズの頬を撫でていたら、ふとフランソワーズが目を開けた。 「うふ。くすぐったいわ、ジョー」 でもやめない。
でも――
僕はじっとフランソワーズを見つめた。 「ジョー。そんなに見ないで。恥ずかしいわ」 半分拗ねたように言うのが可愛い。 「それはね、」
――きみが好きだから。
「えっ?なあに。聞こえないわ」 僕はフランソワーズの耳元に口を近づけると小さく言った。 「ずっと見ていたいんだ。だって僕はフランソワーズのことを――・・・・」
フランソワーズはぱっと頬を染めると、くるりとむこうを向いてしまった。 「もうっ、いやなジョー!どうしてこんな時にそんなことっ・・・」 咳き込んだから、僕はごめんと言って彼女の背をさすった。 「いやその。・・・他に思いつかなくて」 思いつかないって何が、と咳の合間に質問された。
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―5―
シーツのなかで丸くなって頭まですっぽり埋まってしまったフランソワーズ。金色の髪だけが見える。 僕はその髪をそうっと撫でた。
シーツのなかから聞こえてくる。 「どうして急に言うのよ」 小さい小さい声。 「もうっ・・・」
急にそのシーツが宙に翻ったかと思うと、シーツにくるまれていた中身が僕の首筋に抱きついた。
end |