「一日遅れの誕生日」

 

「あ……」


そっか。

誕生日だったんだ。昨日。

 

ひとごとのように思ったのにはわけがある。

年末からずっとミッション中だったからだ。
忙しくて大変な非日常。
だから、誕生日などという細かいことはきれいさっぱり忘れていた。(とはいえ、ジョーの誕生日は何があっても絶対に忘れない自信がある)

ギルモア邸に帰ったのは昨日の夜遅くのこと。
みんな疲れていたから、早々に自室に引き上げた。
私も例外ではなかったのだけど、喉が渇いたので何か飲もうとキッチンに降りてきたところだった。

夜中の三時。

なんの気なしに冷蔵庫を開けて、


「あ……」


それを見つけた。

ショートケーキ二つが入った透明のパック。コンビニのデザートコーナーで見掛けるそれ。
そのパックの側面に文字が書かれていたのだ。


『お誕生日おめでとう!フランソワーズ』


と。


そっか、誕生日だったんだ。と気が付いて。

慌ただしく帰ってきたのに、いったい誰がいつ用意したのかと考えて。

きっとみんなの総意だろう。
首謀者はたぶんイワンでスポンサーは博士ね。

 

私はしばらくキッチンに佇んでいた。

 

日本語で書かれているメッセージ。ということはこれを買いに走ったのはたぶんジョー。

疲れているのに。

疲れていたのに。


こんな夜中に。


「もう……」

 

夜中のキッチンは寒くて冷えたけれど心の奥は温かかった。