子供部屋
(新ゼロなふたりの日常です)

 

5月29日 モナコグランプリA

 

昨夜は「予選なんか別に」などと言っていたジョーだったけれど、やはり「モナコグランプリは特別」だったらしい。
フランソワーズはテレビに釘付けのジョーを横目で見て、ちょっとだけ複雑な気持ちになった。
ジョーはF1パイロットであり、車のことになると夢中になって寝食を忘れてしまう。いわゆる三度の飯より車が好きという車バカに他ならない。だから仕方ないとはよくわかっているものの、それでもこうして隣にいるのにすっかり忘れられているようなのは胸がモヤモヤしてしまうのだった。
寂しいというわけではない。悲しいというのとも勿論違う。もっと別の、もっと他の、何か――。

「うわっ」

画面のなかのクラッシュを見てジョーが体を引く。

「うーわ、こりゃ大変だ」

体を引いた分、隣のフランソワーズが視界に入ったのかちらりとこちらを見た。

「フランソワーズ、どうかした?」
「ううん。どうして?」
「いや……」

ジョーは何か言いたげにしたものの、いやなんでもないよと口のなかでごにょごにょ言ってから画面に目を戻した。

「…ジョー」
「うん?」
「戻りたい?」
「えっ?」
「レースに」

CMになったので、ジョーが改めてフランソワーズを見た。彼女の表情から意図するものを推理しようとしたが、皆目わからなかった。残念ながら、ジョーに他人の表情を読むなどという芸当はできない。そんなことができるのなら、彼は今まで女性関係でそうそう苦労はしていなかったはずであった。
だから、フランソワーズをじっと見たものの、文字通りただ見ただけであった。

「…そうだね。来年はここで走っていたいね」
「……そう、よね」

いっぽうのフランソワーズもなんだか歯切れが悪い。
ジョーが何よりレースが好きというのは知っているのだから、こんな質問など愚問である。だからきっと、本当に訊きたいのはこんなことではないはずで――はずなのに、では何を訊きたいのかというとそれは自分でもわからないのだった。

「……」
「……」

お互いに黙る。
傍から見れば、見つめ合うアツアツの恋人同士である。

「…ええと」

少ししてから、ジョーがちょっと照れたように頭を掻いた。
そして、再びテレビを見た。
フランソワーズも一緒に同じ方向を見る。
ほんの数分前と同じ状態に戻った。
けれどもフランソワーズの胸にあったモヤモヤは今は綺麗に消えてしまっていた。
ジョーは相変わらずレースに夢中である。
が、今は置いてけぼりになっている気分にはならなかった。
ジョーの手が自分の手を握っていてくれるから。

――やっぱりちょっと寂しかったのかな。

ジョーと触れ合っているそれだけで幸せな気分になるのだから、自分はなんてお手軽なんだろうと思ったけれど、そんなお手軽な自分がちょっとだけ――否、だいぶ――嬉しく思ったフランソワーズだった。

 


 

5月28日 モナコグランプリ

 

モナコグランプリは特別なんだよ――

と、聞いたのは何度目だろうか。

フランソワーズは日本時間では真夜中過ぎに放送になるF1グランプリ予選に備え、見終わった後はすぐ寝ることができるように先にお風呂に入っていた。
日本のお風呂は湯船にしっかり浸かって暖まる。
最初はなかなか慣れなかったけれど、今ではこの入浴の仕方がとても気に入っていた。

「…別にジョーと一緒に入れるからってわけじゃないわ」

浸かりながら口のなかで小さく言ってみる。湯気のむこうにジョーの姿が見えたようで一瞬目をしばたたいた。
もちろん、彼はいまここにはいない。

「――もうっ」

ジョーのばか。

フランソワーズは元々、モータースポーツにさほど興味はなかった。興味を持つようになったのは、ジョーと恋仲になってからである。それまでは放送があることすらちゃんとは知らなかったくらいだった。
それが今はどうだ。
楽しみにしてそのための準備も怠らない。また、結果はネットなどで調べればすぐわかると知っていても絶対に見ず、編集されているとわかっていてもテレビ放送を待ち一喜一憂することに決めているのだ。かなり徹底しているといえよう。
だから、今回のモナコグランプリも大変楽しみにしていた。
それはもちろん、ジョーのひとこと「モナコグランプリは特別なんだよ」による。彼がそう言って以来、フランソワーズの中でもモナコグランプリは特別になったようで数あるグランプリレースの中でも重きを置いている。勿論、モンツァやスパ・フランコルシャンも特別なレースに数えられるのだけれども。

ジョーのばかばかと湯気の向こうに数回言ってから、フランソワーズは湯船から出た。少しのぼせたかもしれない。

レースを見た後は寝るだけというつもりだったから、フランソワーズはパジャマ代わりの簡易な部屋着に着替え濡れた髪をバスタオルで拭きながらリビングに向かった。
が、途中で気が変わった。
放送までまだ随分時間がある。
だからフランソワーズにはまだちょっと――やっておきたいことがあった。

すっかり寝静まった感のあるギルモア邸内。
静かではあるが、各部屋の主が本当に寝ているのかどうかは知らない。
ピュンマやジェロニモはたぶんまだ起きているだろうし――システムエンジニアの彼らに昼夜の区別はあるのだろうかと時々疑問に思う――ジェットは不在。もちろん週末の外泊である。ハインリヒは――きっと遅くまで本を読んでいるに違いない。博士にしても早々に部屋に引き取った様子だったけれど、果たしてちゃんと部屋にいるのかどうか怪しいものである。地下の研究室にこっそり行ってなにやら作っている可能性大であった。
フランソワーズはそんなギルモア邸内をとことこ歩いて自室に入った。いちおう、静かにドアを閉める。
部屋の電気は消してあり、静かなものだった。
フランソワーズは眉間に微かに皺を寄せるとベッドに近寄り、さてどうしたものかと思案した。
ベッドに向かってダイブするというのはさぞ気持ちいいだろう。が、受け止めるのがふかふかのマットレスならともかく、鋼鉄の体の場合は痛いだけで何らメリットはないだろう。
では、さっと上掛けを引き剥がすというのはどうだろう。…否。おそらくダメージを受けるのはやはり自身だろう。いきなり裸体を見るハメになるのはごめんだった。
効果的な方法はサッパリ思い浮かばず、フランソワーズは結局とても単純な手を使うことにした。どうせ室内は真っ暗だ。間違って――ということもじゅうぶん有り得る話なのだから。
そして行動に出た。

待つこと数分。

そろそろ動きが出るだろうと思ったところで、微かな機械音がしてフランソワーズは思わず手を離した。

「もうっ、信じられない、ジョーのばかっ」

ばかばかばかと彼のからだをぽかぽか殴っていると当の本人がうるさそうに片目を開けた。

「うん…なんだい、フランソワーズ」
「なんだいじゃないでしょ!」

構わず彼の上にどすんと腰掛けた。が、彼には全くダメージは無い。

「モナコグランプリは特別なんでしょ!どうしてぐーすか寝てるのよっ。一緒に見ようねって約束したのにっ」
「えー…まだ時間あるだろ」
「さっきまで熟睡してたひとの言葉なんて信じません」
「ちょっと仮眠をとってただけじゃないか」
「仮眠んん?どこが?息が出来なくなって体内の酸素供給に切り替えたくせにっ」
「えー?切り替えてないよ」
「嘘ばっかり!ちゃーんと聞こえたんだからっ。信じられない、緊急時じゃないのにっ。いったいどのくらい熟睡してたのよっ」
「…だから寝てないって」
「寝てたでしょっ」

頬を膨らませるフランソワーズにジョーはちょっと苦笑すると体を起こした。フランソワーズの予想通り、彼は裸体であった(注:ぱんつははいてます)。

「フランソワーズが起こしに来てくれるって思ってたから安心してたんだ」
「そうかしら」
「そうだよ。モナコグランプリは楽しみにしてるんだからさ」
「…アヤシイ」
「ほんとだって。だから自分の部屋じゃなくてこっちで寝てたんじゃないか。ホラ、自分の部屋だと本気で寝ちゃうし」
「…そんなの」

ただ単に寂しがりなだけでしょうと思ったけれど。
抱き寄せるジョーの腕が温かくて、怒りは消えてしまった。ただ呆れだけが残った。

「もう…信じられない。鼻をつままれたら口で息をするか目を覚ますものでしょう。どうして酸素バルブを開いたの」
「さあ?」
「これはメンテナンスが必要ね。009」
「えー。いいよそんなの」
「駄目よ。大事なことでしょう」
「ヤダ」
「故障だったらどうするの」

すると相手は気まずそうに目を逸らせた。

「………わかったよ。熟睡してました」
「ほら、やっぱり!」
「だって結果知ってるし」
「ええっ?ネットで見たの!?」
「……ウン」
「信じられない、一緒に見ようねって言ったのに!」
「だって気になって。なにしろ、モナコは特別だから」
「知らない!ジョーのばかっ」

ばかばかジョーのばかと言い続けるフランソワーズに対し、ジョーはさして反省もせず笑いながらその体をぎゅうっと抱き締め自分の腕のなかに閉じ込めた。

「ね?だからさ、もう見なくてもいいよね」
「イヤよ、私は見たいの」
「僕が出てないのに?」
「だってモナコは特別なんでしょう」
「今日は予選だし見なくてもいいじゃないか」

全く緩まないジョーの腕にフランソワーズはいちおう抵抗してみせたものの、あっさり囚われの身となった。
あるいは――本人は否定するだろうけれど――形ばかりの抵抗に過ぎなかったのかもしれない。

「もうっ…ジョーったら、眠いんじゃなかったの?」
「うん。もう寝たから今は平気」

特別なはずのモナコグランプリ。その予選をフランソワーズは見る事ができなかった。


 

5月22日   誕生日D

 

「…そういえば」

ギルモア邸に帰って無事にフランソワーズ特製のケーキを食べた後、ジョーは自室でフランソワーズとごろごろいちゃいちゃしていた。フランソワーズの頬をつついてお互いにくすくす笑いあったところで、ジョーはふと思い出したように疑問を口にしていた。

「捕まっていたとき、手首が動かないようにされていたんだけど、あれ何だったんだろう?」
「何って?」

フランソワーズはジョーの顔を覗きこむように顔をあげた。

「僕が何をどうしてもびくともしなかったのに、きみ、あっさり解いたよね」
「…ええ」
「どうしてだろう?」
「どうして、って…」

フランソワーズは顔をしかめると、ふっと立ち上がって自室へ行ってしまった。
ひとり残されたジョーはベッドに寝転がったまま大の字になって天井をじっと見つめた。
待つこと数分。
戻ってきたフランソワーズは手になにやら持っていた。

「…ジョーの手首を縛っていたのってこれよ」
「え!?」

ジョーは慌てて起き上がり、フランソワーズが差し出したものを受け取った。

「…本当にこれ?」
「ええ」
「だって、こんなの」

サイボーグのちからを使わずとも簡単に引きちぎることができる、そんなモノだった。

「――おっかしいな。だったらどうして外れなかったんだろう」

フランソワーズはベッドの縁にちょこんと腰掛けると、微かに首を傾げ考え込むように言った。

「…心理的な枷っていうのじゃない?」
「心理的?」
「そう。ホラ、推理小説とかであるでしょう。心理的な密室っていうのが」
「うん。…ドアは開いていて、誰もが普通に通れるはずなんだけど、立ち入り禁止とか入れないと信じ込む何かがあって結果的に誰も通り抜けることができないというアレだろう?」
「ええ」
「で…これが心理的な枷?」
「ええ。だってジョー、これ引きちぎるとか引き裂くとか…できる?」

ジョーは手元のソレをじっと見つめ、小さく言った。

「できない」
「でしょう?だから多分、無意識に外せないって思っていたのよ」

無意識に思っているってどういう状態なんだろうと思ったけれど、そこはつっこまないことにした。
フランソワーズの言う通り、確かに外せはしなかったのだから。

「でも…本当にこれだったのかい?」

ジョーとしてはソレは大変大事なものであったから、それがこんなぞんざいな使われ方をしたのかと思うとちょっと許せない。
けれども安心したことにフランソワーズは首を横に振った。

「まさか。そこまではいくらなんでもしないわ。これは本物だけど、あっちで使ったのは素材が違うの。リボンじゃなくてただのビニールテープよ」
「…」

ただのビニールテープ。
そんなもので縛られていただけだとは。

しかし。

後ろ手に縛られていたとはいえ、たぶん――ちらりと視界には入ったのだろう。青い色だったということは何となく覚えているから。そしてもしも、そんな記憶があったなら、それは絶対に外せなかっただろうとも思った。
何しろ、青いテープはジョーにとって特別に意味のあるものだったから。

ジョーが考え込んでいるとフランソワーズはジョーの手からソレを取り上げ、自分の首に回して結んだ。

「ジョー。お誕生日おめでとう」

フランソワーズの首に巻かれた蒼いリボン。
それは、ジョーが自分の誕生日もそんなに悪くないなと思うに至ったあのリボンだった。
初めてそれを貰って以来、ジョーにとって蒼いリボンは何より特別でとても大切なものであった。

そしてジョーは今年の誕生日も蒼いリボンをかけたものを大事に受け取ったのだった。

 

 

*****
ジョーの誕生日蒼いリボンにまつわるお話はコチラから→


 

5月19日 誕生日C

 

「約束通りケーキを持ってきたわ。さあ、009を返して頂戴」

フランソワーズは持っていたケーキの箱を目の高さに掲げると高らかに宣言した。
そんな彼女の登場を当然予想していたはずの三兄弟は、何故か目に見えて動揺していた。

「兄者、本当にケーキが届いてしまったではないか」
「招待状を送ったのだから当たり前だ」
「いやしかし、いくらなんでも早すぎるのではないか、これでは」
「何ごちゃごちゃ言ってるの?」

フランソワーズは顔をしかめると、三兄弟の前にケーキの箱を置き、転がっているジョーの元に屈みこんだ。

「ジョー、大丈夫?」
「え、あ、ウン。何とか」
「そう、良かった。さ、帰りましょう」
「う、ウン。でもどうしてここがわかったんだい?」
「あの三人がね、連絡をくれていたの。あなたのお誕生会をするからケーキを持ってきて、って」
「誕生会…?」
「009のことがだーい好きなんですって」

いらいらと言う。

「冗談じゃないわ。どうしてジョーをあいつらに渡さなくちゃいけないのよ」

言いながら、ジョーがどんなに頑張っても解けなかった手首の戒めをあっさりと外す。

「私はジョーとふたりでお祝いしたいのに」
「うん。僕だって」

両手が自由になったので、ジョーは立ち上がるとさりげなくフランソワーズを背に庇った。何しろここは敵地なのである。が、しかし、三兄弟はケーキの箱を前に誰が開けるの開けないので揉めている。

「行きましょう、ジョー」

フランソワーズはそんな三人組に目もくれず、ジョーの背に手をかけ促した。

 

***

***

 

ジョーが予想した通り、囚われていた場所は地下であった。しかもかなり深い。
地上へ延々と続く長いエレベーターの中で、ジョーは改めて疑問を口にした。

「よくここがわかったねフランソワーズ」

するとフランソワーズは怒っているのか呆れているのか、防護服のポケットから一枚のカードを取り出した。

「何?」
「見て」

言われるまま見ると、それは招待状であった。ジョーの誕生会への。

「…僕の誕生会」
「ええ。いちおう、招待状のつもりなんでしょう」
「よく届いたね」
「下っ端か本人か知らないけど、直接ポストに入れたんじゃない。…ギルモア邸の」

その光景を想像するとなにやら複雑な気分になったから、二人ともその件についてそれ以上言及するのはやめた。
改めてジョーは招待状を覗きこんだ。

「…009の誕生会を行う。彼を取り戻したくばケーキ持参で来ること。…なんだこれ。脅迫状じゃないか」
「そうなのよ。でも誕生会にこだわっているし、やりたいみたいだから」
「…場所も書いてある」
「ええ」
「僕がここに来たのは偶然なのに」

思い立ってふらりとやってきたのだ。

「…それがそうでもないみたいよ?」
「えっ?」
「いつから計画していたのか知らないけれど、罠みたいに幾つか仕込んであったみたい。あなたをここへ誘導するために」
「………ふうん」

自分の意志でここにやって来たと思っていただけに、他人の作為があったと知るのは面白くなかった。
とはいえ、そもそも自分が家出などしなければこういう事態にはならなかったわけだから、ジョーとしては何も言い返すことができない。何か口にすればすぐさまフランソワーズに叱られるだろうことは目に見えているからだ。

「…ケーキ、置いてきてよかったのかい?」

とりあえず、さきほどフランソワーズが持ってきたケーキの心配をすることにした。

「手作りなんだろう?」
「ええ、まぁ…そうね」
「フランソワーズのケーキ。あいつらが食うのか」

なんだか怒りが湧いてくるのはなぜだろう。

「あら、仲良くみんなで食べたかった?」
「まさか!冗談じゃないよ」
「あのひとたち、ケーキが目的だったのかしらねぇ。ジョーが逃げても気付かなかったみたいよ?」

 

***

***

 

「兄者、ケーキはいいが009がいないぞ」
「うん?…ああ、そうだな」
「そうだな、って…奴を改造する計画はどうしたのだ」
「お前、本気にしたのか?」
「えっ?」

駄目だなあと二人の兄に見据えられ、末っ子は大いに動揺した。

「え?だって009を罠にかけたのはそのためじゃ…」
「そんなことをしてみろ。あいつらのリーダーにどんな目に遭わされるか考えるだに恐ろしいわ」

そんなわけで、末っ子もリーダーが暴れたときのことを思い出してみた。確かに彼女は009が絡むととてつもなく手がつけられなくなっていた――ような気がする。

「し、しかし兄者。だったらどうして009をここに誘い込んだのだ?そんなに彼女が恐ろしいなら何も手を出さなくてもいいではないか」
「……今回の黒幕は誰なのか考えてみろ」
「えっ。…兄者ではないのか」

むっつり黙り込んだ兄二人。
末っ子はただただケーキを見つめていた。これって食べても大丈夫なのだろうかと思いながら。

 

***

***

 

「それにしても妙な誕生日になったなぁ」

ギルモア邸に向かうストレンジャーの中でジョーはしみじみと言った。

「まぁ、別にどうでもいいけど」
「あら、よくないでしょう」

フランソワーズは助手席でにっこり笑った。

「誰にも言わないで家を出るの、後悔しなかった?」
「……それは」

した。
思いっきり、した。
が、それを言うのは何故か憚られたので曖昧に語尾を濁した。

「敵にお誕生会をされるのってどう思った?」
「びっくりした」
「でもイヤイヤお祝いされたんじゃないでしょう?」
「うん……たぶん……って、あれ?」

何かおかしい。

「どうしてフランソワーズが知ってるんだい?」
「えっ?」
「奴らがイヤイヤじゃなかった、って」
「――さあ。なんとなく、よ。想像」
「想像……」
「ええ。私、想像力が豊かなの」

何だか腑に落ちないものの、ジョーはこれも棚上げした。

「ね?お誕生日って大事でしょう?」
「何が?」

話が飛んだような気がする。

「普通でいい、って言ってたけど、お誕生日って大切なのよ」
「それは周りのひとにとってってことだろ?」

前にそう言っていたのはフランソワーズ本人だった。

「そうよ。だから自分勝手な行動して勝手に窮地に陥るのはもうやめてね」
「――え」
「反省したでしょう?」
「う、うん」
「お誕生会をするって私が言っていたから、ちゃんと無事に帰らなくちゃって思ったでしょう?」
「う……ん」
「ね?その時の気持ちを忘れないでね」
「…………」

なんだかおかしい。
これって――今日捕まったのって、たまたま偶然こうなっただけでフランソワーズの過去の話とは無関係なはず。
それともフランソワーズが勝手に総括しているだけなのだろうか。
謎は残るけれど、ジョーはとりあえず――反省したのは確かだったから、素直に頷いた。

「着いたらみんなでお誕生会よ。ケーキもちゃーんとありますからね」
「…そうなんだ」

上機嫌なフランソワーズを横目にジョーは内心首を捻っていたけれど。

――いろいろあったけど、やっぱり僕はフランソワーズとこうしていられるならなんでもいいな。

隣に大切なひとがいて、そのひとが自分が誕生したことを祝ってくれる。
そんな些細なことが酷く大切な得難いものであることを強く心に刻んだ日となった。

 


 

5月16日  誕生日B

 

「さて、と」

フランソワーズは満足そうに手元を見た。
ケーキは無事に焼きあがってデコレーションも綺麗にできた。そしてラッピングも満足のいくものに仕上がった。

「そろそろ頃合ね」

そしていったん自室に戻り出かける準備を整えると――おもむろにケーキの箱を取り上げたのだった。

「あれ?出かけるのか」

廊下で行き会ったジェットが問う。

「ええ、ちょっとそこまで」
「そこまで、って…」

えらく日本的な受け答えだなと妙なところに感心するジェットである。

「それ、ジョーのケーキだろ」
「そうよ」
「なんで持ってるんだ」
「ジョーに届けるために決まってるでしょ」
「いやだから、俺の言ってるのは」

今日はジョーの誕生日であり、確かここで――ギルモア邸で祝うのではなかったか。

「……ジョーのマンションに行ってふたりっきりってやつか?」
「違います」
「じゃあ、…なんだいったい」
「うふ。秘密」

ジェットは疑わしそうにフランソワーズを見たが、その秘密とやらを明かす気はないとみてため息をついた。

「まぁ、いいさ。別に俺たちは奴の誕生会をやろうってわけじゃねーし。どこかでふたりっきりでやってくるんだな。誕生会とやらを」
「うふふ。ふたりっきりじゃないけどね」
「あん?――レース仲間と一緒とかそういうのか?」

それじゃお前さんはつまらないだろうと言うのを笑顔でかわし、フランソワーズは玄関に向かった。

「大丈夫よ、もっと楽しいことが待っているから」

 

***

***

 

もう金輪際、誰にも何も言わずに出かけるのはしないぞ。

ジョーは固く固く心に誓った。

やっと意識がはっきりしてきて、体のだるさもとれて――立ち上がってみようかともがいていた時だった。
軽い電子音と共に目の前の床に切り込みがはいり、円形に繰り抜かれ――否、円形のものがなにかせりあがってきたのは。
そうか、床が動くのか。
ドアも何もない部屋。いったいどこからどうやってここに来たのだろうかと思っていたが、いま、その謎が解明された。
そしてその床が動いているということは、とりもなおさずここに誰かがやってきたということであった。

ジョーは床でもがくのをやめてただじっと待った。
いったい誰がやって来るというのか。

そして。

それを認めた瞬間、心に誓ったのだった。

 

***

 

「目が覚めたか009」
「単身乗り込んでくるとはいい度胸」
「しかし、己の非力さを知るがよい」

三人の哄笑が響く。
009はぎゅっと唇を噛んだ。

ネオブラックゴースト…!迂闊だった。

まさかまだ活動していたとは思わなかったのだ。だから、この研究所と思しき建物の敷地内に侵入する時も、さほど注意を払わなかった。それが仇となった。

「我らの罠とも知らず。ああ、愉快愉快」
「無様だな。その姿」
「助けを待っても無駄だぞ」

この部屋にやって来たのは、ネオブラックゴーストの三兄弟であった。
ジョーは床に転がったまま三人を睨みつけた。動けないいま、彼にできることはそのくらいしかなかった。

そもそもジョーがここにやって来たのは偶然だった。
ある日、ぼんやりと観ていたテレビのニュース。それは、違法な人体実験を行っていると思しき施設への命がけの潜入捜査の様子であった。が、しかし、取材陣が入った部屋はどこもモヌケのカラで、研究所内は夜逃げをした後のような様相を呈していた。そこで映像は終わっていた。
しかし。

――こういう所って実はまだ稼動していたりするんだよな。

秘密の地下とか。隠し部屋とか。
ジョーはそう思い、捜査が甘いな、でも素人だから仕方ないかなどと思ったものだった。

その記憶が強烈だったからだろうか。
誕生日を翌日に控えた今日、ふとその研究所に行ってみたくなった。もしもまだ実は違法な実験が続いているとするなら許すことは出来ない。何しろ、そこは人間の臓器を人工物に置き換える研究をしており、実際に人間を使って実験を繰り返しているのだという。あくまでも推測の範囲ではあるが。
ジョーは我と我が身を振り返るたびに、これから先、決して自分と同じような境遇の人間を作ってはならないと強く思っていた。だからこのような研究所は――完全に機能しないよう、破壊するべきである。そう思っているのだった。
しかし、こんな身勝手な思いを他のメンバーには言えなかったし――せっかく平和なのに余計なことをするなと言われそうな気もしたし、逆に手伝ってやろうと言われることも申し訳なかった。巻き込むつもりはさらさらないのだ。
だから本当に、ふらりとやって来た。誰にも言わずに。

そして捕まった。

自業自得とはこういう場合に使うのだろうか。
今さらながら、国語の勉強もちゃんとしておけば良かったな――なんて思ってみたりする。
三つ子を目の前に、ジョーは成す術もなくただどうでもいいことを考えていた。

そんなぼやんとした様子が伝わったのだろう。
三つ子は哄笑を止め、ひたと009を見据えた。

「貴様。今からどうなるかわかっているのか?」
「ただで帰れるなど思ってはいないだろうな」
「兄者。こやつを実験に使うというのはどうだろうか」

ああ、それはいい考えかも知れぬな…

009にとって嬉しくない提案がなされてゆく。

 

***

***

 

必ずケーキを持参のこと。

フランソワーズは今一度、招待状の文字を読んだ。それから、その裏に書かれている地図も。

「…ここだわ」

目の前にあるのは、いっけん普通の研究所だった。しかし、ざっと透視してみたところ既に廃棄された場所であることがわかった。

「変な場所を選ぶのねぇ…」

用心しながら敷地内に入った。

 

 

***

***

 

「009を実験体にすることに決まった」

高らかに宣言されるけれども、ジョーは全く嬉しくなかった。

「…すまないが、無駄だぞ。俺は既に改造を受けているし、生身の部分なんかない」
「ふん。そんなことはわかっている。そこを更に進化させてやろうというのだ」
「喜べ。目からビーム光線が出るようになるぞ」
「髪が針のようになって飛ばせるようにもしてやろう」

それは同じ片目の少年でも話が違うだろうとジョーはちょっとうんざりした。
あまり危機感を感じないのは何故だろうか。

「ふっふっふ。怖くて声も出ないか」
「誕生日だというのに気の毒な奴」

え?

誕生日?

「…………なぜ、知っている」
「ああ?何か言ったか」
「なぜ今日が俺の誕生日だと知っているんだ」
「ああ、そんなことか。――フン。ちょっと調べればすぐにわかることだ。お前、レーサーだろう?」
「貴様の名前をネットで検索したらあっという間に色んな情報が手に入ったぞ」
「弟よ。お前は唯一コンピューターに詳しいから助かるぞ」
「そう言うな兄者。簡単だから今度からは自分でやると良い」

ジョーはげんなりした。

だから誕生日は嫌いなんだ。

「誕生日というのはケーキがつきものなんだってな。ネットに書いてあったぞ」
「だから準備させてもらった」

…えっ?

「気の毒な009.これで少しは気が晴れよう」
「だったら逃がしてくれ」
「そうは行かぬ!」
「ケーキなくして誕生会はできぬのだぞ!」

た…誕生会?

「もうすぐ届くから待っておれ」
「いや、俺はここから出て」
「駄目だ、009.それは許さん」
「いやでも、俺の誕生日を祝ってくれるつもりなら…」
「こ、こら!誰が祝うなどと言った。我らは単にケーキとやらを食べたいだけで」
「そうだ。もうすぐここにケーキがやってくるのだ」
「ひとくちくらいなら、分けてやってもいいぞ009」
「…要らない」
「ふん。そんな強がりが言えるのも今のうちだ」

そう言った瞬間。
壁の一角が消え、そこには見慣れた影が立っていた。

「ふ、フランソワーズ…?」

右手にはケーキが入っていると思しき箱。
金髪碧眼の女性は、一歩前へ踏み出した。

「約束のケーキよ」

 


 

5月15日 誕生日A

 

誕生日だからといって特別な事は何もない。
いつもと変わらない日常でいい。

そう望んだせいだろうか。

――たまに何か望むとこれだ。

ジョーはやや自嘲気味に笑った。
もちろん、ジョーとて自分が何か望むとそれと相反する結果が訪れると本心からそう思っているわけではない。
ただ、偶然といってもこれほど因果が一致するとそう思いたくもなってしまう。

……フランソワーズ、待っているだろうな。

誕生日を祝うという会に間に合うかどうか。

ジョーはそれだけを考えていた。

 

***

 

ちょっと困った事になったなと思った。
別に油断したわけじゃない。そうなんだけど、今の事態はやはりピンチといえる範囲のものだろう。
今更じたばたしてもしょうがない。
もっとも、じたばたできるような状態ではなかったのだけど。

目が覚めたとき、ジョーは後ろ手に縛られ床に転がされていた。
冷たくて固い床。
部屋はがらんとしており四方を壁で囲まれている以外何もない。
見上げた天井は遥か遠く、そのずうっと上方に唯一の照明といえる窓がひとつあった。50センチほどの小さい窓。
そこから差し込む光だけが外界とこの部屋を繋いでいた。

――地下だろうか。

あるいは――塔のようなもの?

入る前に視認した範囲では、塔のような高い建造物は無かったから、おそらくここは地下なのだろう。
となると、地上に出るにはあの窓以外ないのか。
笑えることに、部屋の中にはドアというものが無かった。いったい自分はどこからここへ放り込まれたのだろう。
まさかあの窓から落とされたわけではないだろう。幸いにも、身体のどこにも痛みを感じてはいない。
ただ、意識だけがいまひとつすっきりしなかった。
目が霞むというか、眩暈がするというか。ともかく、意識清明というわけにはいかないようだった。が、それもじきに晴れてくるだろう。ジョーはそう踏んだ。いま、意識が戻って来ているということはそういうことなのだ。だから、しばし待つしかない。それまでは今の状況を出来る限り把握しようと床に寝転がりながらそう思った。

まず、両手だがこれは全く動かすことができなかった。
手首にかけられた戒めは対サイボーグ用なのだろうかと思うほど頑丈であり、009のちからをもってしても破ることはできなかった。
両足は自由だった。が、レイガンなどの武器は失われていた。

ジョーはため息をついた。
これはどうやら、自分の持っているちからだけで脱出しなければならないようだ。しかも、両手が使えないという状態で。
嬉しくない情報にただ嗤うしかなかった。
なにしろ、いまジョーがここでこうなっていることは誰も知らないのだ。だから救援も望めない。誰も助けになど来てはくれないのだ。
せめてフランソワーズには何か言って出てくるべきだった。
ジョーはいままさに、自分の放浪癖を呪っていた。

 

***

***

 

「あれ?フランソワーズひとりかい?」

キッチンでケーキを焼いているフランソワーズの背にピュンマの声がかかった。

「ええ、ひとりよ。どうしたの?」
「いや。ジョーの姿が見えないからどうしたのかと思ってさ」
「ジョー?」
「ほら、アイツはこういう時フランソワーズの邪魔ばかりするだろう?だからてっきり一緒に居るもんだと思って」
「ジョーに何か用事があるの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね」

なにやらもごもごと言いにくそうに呟くピュンマにフランソワーズはにっこり笑った。

「ジョーなら大丈夫よ。ちゃんと帰ってくるわ」
「え。いま出かけているのかい?」
「ええ……たぶん」
「たぶん、って」
「だってホラ、お誕生日だから」

誕生日。

それは、ジョーにとってあまり――というか全然――興味の無い日であった。が、それも数年前までの話で、今はフランソワーズの影響で彼もけっこう自分の誕生日を楽しんでいるというのが周知の事実であった。
だから、誕生日だからといって彼自身が雲隠れする理由などもはや無いのではあったが。

「……何かもめているのかな」

ピュンマが嫌そうに言う。
彼と彼女のとばっちりを食うのはもういい加減卒業したいものだと思いながら。

「ううん、もめてないわ」
「それを聞いて安心したよ。でも、だったらどうしたんだい?誕生日だから外出って変だろ。きみがケーキを焼いて、家で祝うのを知っているだろうに」
「そうね。だからちゃんと帰ってくるから大丈夫」
「…どこへ出かけたのかは訊かないほうがいいのかな」

するとフランソワーズはちょっと不自然に黙り込み――その沈黙は約1分続いたから、ピュンマはなんだか落ち着かなくなった。言い出せないだけでやっぱり何かもめているのじゃないかと思ったりもする。

「あのさ、フランソワーズ」
「ううん、大丈夫よ。本当にそんなんじゃないの。ただ…」
「ただ?」
「……ジョーの放浪癖がね。もう治ったとばかり思っていたから」

それっきり、ケーキ作りに戻ってしまったのでピュンマはひとり話から取り残された。

ジョーの放浪癖。
それは、以前なら度々見られていたことで珍しくもなんともない。そして確かそれは彼の誕生日前になると必ずやってくる一種の流行り病のようなものでもあった。

――つまり、ソレか?

ピュンマは呆れた。

全く、何やってるんだアイツ。

いい加減、そういうのは卒業したとばかり思っていたのに。しかもフランソワーズに心配かけるなんてどうかしている。そんなの、絶対にやらないと思っていたのに。
少々裏切られたような気持ちになった。

が、しかし。

目の前のフランソワーズは何も心配してはいないようだった。

 


 

5月13日 誕生日@

 

「別に……何もないよ」


お誕生日に何か欲しいものはないかと訊かれ、ちょっと考えてからジョーは答えた。
本当は即答できたのだが、あっさり「ない」と答えたら何やら紛糾しそうだったのでちょっとだけ考えるふりをした。

「誕生日だからって何が変わるわけでもないし」

ひねくれて言っているわけではない。
確かに数年前まではそうだったかもしれないが、今では己の誕生日に関して何ら憂うものはなかった。
その点ではフランソワーズに感謝している。が、だからといって毎年誕生日を祝われるというのは慣れないし、そんな必要があるのだろうかと思ってしまうのだった。

「普通でいいよ」

言うだけでは足りないだろうと思い、少し笑ってみた。
が、しかし。
目の前の金髪女性は少し機嫌をナナメにしたようだった。

「わかってないのね、ジョーは」

誕生日に関してまだまだ素人ねと呟く。誕生日に素人とか玄人とかあるのかとジョーは首を傾げたが、敢えて口には出さなかった。

「誕生日ってね」

フランソワーズは怒ったように言う。

「主役はどうでもいいの。周りの人が喜ぶ日なんだから」
「周りの人?」

主役がどうでもいいってこともあるのだろうかと思いつつ尋ねる。

「そうよ。あなたが生まれてきて嬉しい、って」
「…」
「どうしてそこできょとんとするの?」
「いや…僕が生まれて嬉しいなんて思う人はいないから」

ひねくれているのではない。単純に疑問だったのだ。
何しろ自分は生まれてすぐに「要らない」と言われたのだろうから。
だから、何も考えずにそう口にしていた。
すると。

「いるでしょ?目の前に!」

怒ったような声とともに胸倉を掴まれ、ジョーは一瞬息が詰まった。
身長差を考えるとフランソワーズに胸倉を掴まれ引き寄せられるというのはけっこう辛い体勢である。

「え、だってさ」
「だってじゃないでしょう。ああもうっ、悔しいったらないわ!もしもタイムマシンに乗ることができるのなら、ジョーが生まれた日に行って大喜びできるのに!」
「…」
「それだけじゃないわ!毎年毎年、ありがとうって言いに行くのに!出会うまでのあなたのお誕生日のぶん、言えるのに!」
「…」
「ちょっとジョー!聞いてるの?」
「………………ウン」

聞いてなかった。
聞こえていたけれど、フランソワーズに掴まれ引き寄せられたままだったから息が詰まって胸が詰まって何も言えなくなってしまった。

「しょがないわねぇ。もう、いいわ。だったら今年のお誕生日は今まで言えなかったぶんもお祝いしますからね?」
「…………ウン」
「いい?ジョーのためじゃなくて、私のためよ?」
「……ウン」
「で?ジョーは何か欲しいものはないの?」
「――へ?」

そうだった。
そもそもはそういう話だった。でも、話の流れからいくと当事者であるジョーにプレゼントというのは何か妙な気持ちがする。そういう顔をしていたのだろう。フランソワーズがくすりと笑った。

「もう。ジョーったらさっきから驚いた顔ばっかり。いいじゃない。生まれてきてくれてありがとうってプレゼントをしたいんだから。それは、お祝いしたい私の自己満足なんだから気にしなくていいの」
「…そういうもんなのかな」
「そうよ」
「だったらリクエストするのっておかしくないかな」
「そうかしら」
「うん」

本当に欲しいものなんてないのだ。
何も思いつかない。

「…わかったわ。じゃあ、今年は私があげたいって思ったものをあなたにあげるわ」

フランソワーズがあげたいと思ったものをジョーにあげる。
それっていつものことじゃないか…と思ったけれど、ジョーは黙っていた。
誕生日だからといって日常と何ら変わるものはないのだ。だから、いつもと同じでよかったし、それだって別になくても構わないのだ。
ジョーが常に求めているのはフランソワーズ自身と彼女と共に過ごす時間。それだけなのだから。