そんなわけで、ジョーはフランソワーズにくっついたまま離れなかった。

くっついたままのジョーからフランソワーズが少しずつわけを聞きだし、それを仲間に伝えたので全員が納得したのだが、それにしても。

「アイツ。口では「僕たちは別に」とか何とかすかしたこと言いやがるくせに、いざとなったらこれか?」
「猫一匹にとんだ大騒ぎ野郎だぜ」

フランソワーズを抱き締めたまま離れないから、フランソワーズはリビングのソファにずっと座ったままだ。
膝の上にジョーを載せたまま。
一度、席を立とうとしたら物凄い勢いでジョーに阻まれた。それ以来、ジョーから離れるのは諦めている。
きっとジョーが飽きるまで――もう十分だと満足するまで――離してもらえないと悟ったのである。

「それにしてもフランソワーズも災難だなぁ。あれじゃあ、おちおち本当に誰かに心変わりもできやしねえ」
「いいんじゃない?心変わりなんてする気もおきないさ」
「そうだな。見てみろよ、あいつの顔」

そうしてリビングの戸口から若い二人を振り返った。

「・・・嬉しそうだな」
「ああ。ジョーったらとか何とか言いつつ、あの顔はないだろーよ」
「ジョーには見えてるのかな」
「さあな。見えてないだろうよ」

ジョーはフランソワーズの膝に頬をすりよせ目をつむっている。

「・・・まぁ、いいんじゃない。フランソワーズのあんな顔、そうそう見られないし」

口では困ったわ、まったくもうジョーったらと繰り返しているものの、どこか嬉しそうなフランソワーズ。

「熱いねぇ」
「ああ、熱い熱い」

 

***

 

***

 

 

 

もしもきみに恋人ができたら。

僕の他に、好きなひとができたら。

 

いつか僕は、きみの本当の相手にきみを渡さなければならない。

 

――そう、思っていたけれど。

 

 

ごめん。フランソワーズ。

 

 

 

無理。