冬の夜
「ジョーってあったかい」 フランソワーズはふふっと笑うと、先刻よりも体をぴったりくっつけた。 「冬はジョーのそばで寝るのが一番ね」 ジョーはフランソワーズのひんやりした足に気付き自分の足を巻き付けた。 「寒いならすぐ言わなくちゃダメだろ」 そうして小さな小さな唸るような音がジョーの中から聞こえ、彼の体が微かに熱を帯びた。 「あっ、ジョーったら大丈夫なのに」 きっぱり言い切るジョーの横顔をちょっと見た後、フランソワーズはジョーの胸に上半身を載せて彼の顔を正面からじっと見つめた。 「なに?」 きょとんとこちらを見る褐色の瞳にフランソワーズは小さく息をついた。 「・・・僕があっためてあげるよ、って言うんじゃないの?」 そういう意味じゃない。 ――ほんと。いつまでたっても、こういうところは鈍いんだから。 しかし、そんなところも含めて好きなのだから仕方がない。 「じゃあ・・・もっとあっためてくれる?ジョー」 けれども言い慣れないその言葉に頬が燃えるようだった。現在の二人の状況――ひとつのベッドにぴったりくっついて寝ているのだ――と自分の発した言葉の意味を考えると、それはとんでもなく――大胆なことを言ってしまったのではないだろうか。 ジョーは無言で彼女の背に腕を回し抱き締めた。 「いいけど、僕の熱で溶けても知らないよ?」 困ったような口調のジョーにやっぱり意味が通じてないのかとがっくりした。 「いいわよ、ちょっとくらい溶けても」 投げ遣りな気分で言う。 「え、ジョー?」 煌めく褐色の瞳は熱を帯びているようだった。 「まったく。さっきから挑発するから、もう知らないよ?」 掠れた声が耳元で小さく告げる。 「ち、挑発なんて」 ジョーの唇が掠めた耳元がかっと熱くなる。 「だめ。もう遅い」 いや、そんなつもりではあったのだけど。 「やっぱり溶けたら困るんだ」 フランソワーズはジョーの首に腕を回した。そんな風に言われたら、こう答えるしかないだろう。 「溶かして、ジョー」
|