僕はどうやら怪我をしたらしい。
自分の心拍モニターの音を聞きながら、いったい何があったんだっけと考える。
ちなみに心拍は正常だ。
酸素飽和度も大丈夫そうだから、併せて考えると命に別状はない。
ならば体を起こしても問題ないだろう。
起こしてみる。
動かない。
なぜだ。
――右腕が固定されていた。
横目を使って見える範囲でわかったのは、どうやら右手を怪我したらしいということと、ちょっと起きるのは難しそうだということだった。
やれやれ。
僕は起きるのを諦めて、ぼんやり天井を見た。
……いったい、何年経ったのだろうか。
何度目を覚ましても、変わることのない光景。
何度目を覚ましても、同じことの繰り返し。
メビウスの輪のなかに閉じ込められた時間。
確かに、そういう敵と戦っていた――はずだ。
だからこれは、その後遺症なのか?
僕はこの部屋についている唯一のドアを見つめる。飽くこと無く。
そしてまた眠りにつくのだろう。
いつか誰かかあのドアを開けて、僕をこの閉ざされた時間から助けにきてくれることを夢にみながら。
それが、フランソワーズだったらいいなと眠りに落ちる前に思った。
それが無理なことは知っていたけど。
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