「フランソワーズ、僕と一緒に帰ろう」
ジョーは一歩前に進むと手を差し出した。
「フランソワーズ。わからないのかい?――僕が本物だよ」 「騙されるな、フランソワーズ。ソイツは偽者だ」
フランソワーズは握っているレイガンに力をこめた。 二人のジョー。 どちらかが本物でどちらかが偽者。 自分は本物を選び、偽者を倒した上で本物を連れて帰らなければならない。 ジョーAとジョーB。
「フランソワーズ、わかるよね。僕だよ」 「騙されるな、フランソワーズ!」
同じ瞳同じ声で訴える。
「わかったよ。しょうがないなあ」 と、ベルトを緩めたのはジョーA。
と、慌てて両手を尻に当てたのはジョーB。
フランソワーズは微笑んだ。
***
「いやあ、びっくりしたよ。まさか人前であんなこと言うなんてさ」
フランソワーズはくすりと笑った。 「ばかね。ないわよ、ホクロなんか」 そしてそれは成功した。 「なんだ、そうなのかぁ」 くすくす笑うフランソワーズをしばし眺めたあと、ジョーは少し身を乗り出した。 「でもさ、フランソワーズ」 他のメンバーには聞こえないように。 「きみは僕の尻について、随分詳しいひとになってるみたいだけどいいのかい?」 フランソワーズはそんなジョーの鼻を指でつついた。 「私たちのこと、まだ誰にもばれてないと思ってるの?」
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