<39日だから☆フランソワーズのどーんとやってみよう!>

超銀

 

 

どーんとジョーを押し倒してみたまではいいけれど。


……ここから先はどうしよう?


そう思っていたら、見透かされたかのように声をかけられた。
体の下にいるひとから。


「まさか、これからどうしようなんて思ってないよね、フランソワーズ」
「えっ?ええ、もちろんよ」
「そうだよね。今までさんざん教えてきたんだし?」
「!!!」
「恥ずかしいとか遣り方がわからないとか、そんな子供みたいなこといわないよね?」

 

もう、知らないっ!

 

 


 

 

ジョーに意地悪を言われ、つんと顔を背けたフランソワーズはそのまま彼のからだの上から退いた。


「あれっ、何もしないの」
「しません」
「ひどいなぁ。ひとを押し倒しておいてそのままかい?」
「そのままです」
「中途半端はよくないよ?」
「意地悪言うからでしょ?」
「別に意地悪言ってないじゃないか」
「言いました」
「…ふむ。つまり、あれだ。本当に遣り方がわからない、と」


フランソワーズは答えず、ジョーの上から退いてついでにベッドの上からも退いた。
そしてそのまま去ろうとしたが、ジョーの手にがっちりと手首を掴まれ阻まれた。


「馬鹿だなぁ。わからないんだったら訊いてくれればいいのに。いくらでも教えるよ?」
「なっ…」


なによそれ!


途端、頬がかあっと熱くなって、フランソワーズは邪険にジョーの手を振り払った。


「別に、教えてくれなくてもわかってますっ」
「へーえ。ほんとに?」
「ええ」
「じゃあ、いまなんで逃げようとしたの」
「それはっ…」


今日こそは自分が優位に立つはずだったのに。
当初の目論見が外れ、今やすっかり劣勢かつ防御いっぽうのフランソワーズだった。
ジョーを困らせるのなんて夢のまた夢に違いない。


――それにしても。
どうしてこのひとって、いつもいつも余裕なのかしら?


フランソワーズにはそれが不思議だった。
たまには戸惑ったりとか、そういうことはないのだろうか。


「フランソワーズ?」


しかし。
名前を呼んだ声が少し自信なさそうに聞こえて振り返った。

目が合った。

自信満々の笑顔があると思いきや、出会ったのは不安そうな色の瞳だった。


「ジョー、どうし」


どうしたの、と訊く前にそっと言われた。


「…僕から逃げるの」


胸が詰まった。


「…もうっ…ずるいわ」


そんな顔でそんな声でそんなこと言うなんて。
置いていけるわけないのに。

 

小さく言うと、そうっとジョーを抱き締めた。