<39日だから☆フランソワーズのどーんとやってみよう!>

新ゼロ

 

 

どーんと押し倒したら、ごんっ、と鈍い音がした。


「っつ……」


下になっているひとが頭を抱えて唸っている。


「ジョー、どうしたの?」

「…フランソワーズ」


しばらくして、地底から響いてきたかのような恨めしげな声がした。


「気持ちはわかるけど、もう少し周囲のことを考えようよ」
「えっ?」


周囲?


ちなみにここはガレージである。ひとけはない。
他人の目を気にする必要などない。


「違う。そうじゃなくて、それ」


からだを起こしたジョーが指したのは、金属製のツールボックスだった。
先程の鈍い音は、ジョーの頭とそれの出会った音のようだった。


「いきなり押し倒すんだもんなぁ。あ、いや、楽しいからいいけど」


頭をさすっていると、フランソワーズがその手を優しく抑えた。


「ジョー。続きはいつにする?」

「え」


きらきらした蒼い瞳。

「つ、続き、って…」


目眩がしたのは、頭を打ったせいだけではないだろう。

 

 


 

 

「…膝が痛い」


フランソワーズの甘えたような訴えによってすぐに上下が反転した。


「ごめん、大丈夫かい?」


心配そうな声と瞳でじっと見つめられ、フランソワーズは苦笑した。


「ジョーのせいじゃないわ。私のせいよ」
「でも」


確かに、フランソワーズが望んでそうなったことではあったけれど。
ガレージの床はざらざらしたコンクリートなのだ。
そこに膝が擦れれば痛むことくらいわかっていてもよさそうだったのに。
ぎゅっと唇を噛んだジョーの頬にフランソワーズは手をあてた。


「ジョーったら。そんな顔しないで」
「うん……」


すっかりしょげてしまったようなジョー。
フランソワーズは体を起こすとその頬に唇をつけた。


「いいの。私がそうしたかったんだもの。それに、ジョーのほうこそ背中が冷たかったんじゃない?ずっと我慢してくれたんでしょう?」
「別に冷たくなんか」
「ううん。いまは床もジョーの体温であったまっているけど、最初は寒かったでしょう」
「平気。それより、膝…大丈夫?」
「ええ。…ちょっとジョーに甘えたくなったから言っただけだもの」


少しうつむいて恥ずかしそうに言うフランソワーズ。

ジョーは思わずぎゅうっとその体を抱き締めていた。