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自分の頬をつねってみた。
痛くなかった。
やっぱり夢だ。
だって、フランソワーズがこんな事を言うわけがない。
夢なんだ。
・・・夢。
だったら、僕は。
「わかった」
夢の中でくらいは、ものわかりのいい男になって、綺麗に別れてみせる。
現実では絶対できないから。
きっとフランソワーズの前で大泣きするだろうから。
「・・・今までありがとう。フランソワーズ」
余裕でにっこり笑むのさえ、できてしまう。
だってこれは夢なんだから。
夢でなければ、君が僕と別れたいなんて言うわけがない。
  
「・・・ジョー?」
蒼い瞳が真ん丸くなっている。
驚いている。・・・その顔も、可愛い。
僕がすんなり別れに応じたから、驚いているんだね。
夢の中でくらい格好つけさせてくれよ。
「ホントにいいの?別れても」
「君がそうしたいなら」
そう言った途端、君の瞳にみるみる大粒の涙が浮かんだ。
どうして君が泣くの?
泣きたいのは、僕の方なのに。
涙がぽろぽろこぼれ落ちてゆく。
「どうして・・・?ジョーは平気なの・・・?」
「だって、別れたいって言い出したのは君だろう?僕は、君の望みならなんでも」
叶えるよ。
と、言ってキメるはずだったのに。
途中で君が胸に飛び込んできたから言えなかった。
「フランソワーズ?」
「どうして『嫌だ』って言ってくれないの?」
だってそれは。
夢だし。
ものわかりの良い僕。っていうのがあったっていいじゃないか。
そっとフランソワーズの両肩を掴むと、僕から離した。
「相手を間違っているよ」
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