「Check!」

-1-

崩壊してゆく島を遥か下にして、ジョーと私は飛行艇でギルモア研究所に向かっていた。


イワンのミルクを買いに行く途中で襲われて、パラライザーで眠らされ・・・それ以降の事は憶えていない。
次に気付いた時は、何やら怪しげな雰囲気の建物の中にいて、見た事もない男の人の顔が至近距離に迫っていた。
数瞬前に頭をひどくぶつけたみたいで、それで目が覚めたみたいだった。

「大丈夫?―――じゃ、続きを」

続き?
いったい何の?

思う間もなく、男の顔が唇が近づいてきて、思わず引っ張たいていた。

―――許可もなく近づかないで。

そして、ともかく逃げた。
奥に迷い込んだ時はとっても不安だったけれど、彫像の一つがグレートだとわかり安心した。
彼はいつも私を助けてくれる。思いがけないところで。
グレートがここに居るなら、遠からずみんなもここに来てくれる。

ほどなく建物全体が揺れて、ジョーが助けに来てくれた。
私は他に残っていた女の子達を先導して脱出した。


そうして今、ジョーと一緒に居る。
二人っきりで。

-2-

自動操縦に切り替えた筈の、隣のパイロットシートに就いているジョーをちらりと見つめる。
相変わらず、両手を頭の後ろに組んだまま身動きしない。
髪で隠されてしまっていて、どんな顔をしているのかもわからない。

何を考えているの・・・?

「ジョー?」

思わず話しかけていた。
だって、何だかとっても久しぶりに会ったような気がする。
おそらく一日くらいしか経っていないはずなのに。

ジョーはむっつりと黙ったまま。

―――慣れているけど。
でも、いつもだったら・・・無言でもちゃんとこちらを見てくれるのに。
今はこちらを見ようとする気配もない。
私が簡単にさらわれちゃったから怒っているの?
でもね。「簡単に」はさらわれていないのよ。戦ったもの。
ただ、パラライザーを使われるとは思ってもいなかった。

「何か怒ってる?」

「・・・別に」

怒っている訳じゃないらしい。
でも、だったら何なの。
・・・変なの。

ナビシートの上で、ふうっと力を抜いて背もたれに身体を預けた。
そうしたら、
自分の太腿が露わになってびっくりした。

何これ。
どういう事?

今の今まで失念していたけれど、そういえば私は今いつもの防護服ではなかったんだわ。
ついそのつもりでいたけれど・・・
改めて自分の格好を見たら、恥ずかしさで全身が熱くなった。
だって、私の着ているものといったら。薄いシフォン素材のワンピースなんだけど、丈はこれでもかっていうほど短いし、胸元は深いV字にカットされている。ノースリーブで肩も晒しているし、更にはその袖ぐりも緩くて、服の隙間から簡単に素肌が見えてしまいそう。ウエストを緩く紐で結んであるだけで、そこをほどけばするっと簡単に脱げてしまう。
そして。
下着をつけていない?

ううん、落ち着くのよフランソワーズ。
ブラジャーは・・・つけていないけれど、ショーツははいているわ。ただ・・・とっても薄いけれど。

いったん安心しかけて、重大な事に気がつく。

このワンピース、微妙に透けてる!!

っていう事はつまり・・・殆ど裸に近い状態ということ?
私は、そんな格好でグレートやジョーと一緒に走っていたというの?

顔が真っ赤になる。
やだ。
どうしよう。
両手で胸元を隠してみるけれど、今さら遅い気もするし、それに大体・・・そうよ。私はどうしてこんな格好をしているの?
記憶を探ってみるけれど・・・駄目。思い出せない。