−3−

両肩にふわっと布がかけられた。

これ・・・ジョーのマフラー?

思わず胸元に引き寄せるようにして、身体がすっぽり隠れるように巻きつけてしまう。

「ジョー、ありがとう」

「・・・別に」

相変わらず言葉が少ない。でも優しい。
とにかく、人心地ついた。ちょっぴりだけど。

「ねえ、どうして私こんな格好をしているのか知ってる?」

不安だった。
それに目が覚めた時、見知らぬ男性は「続きを」と言っていた。そうしてキスしてこようとした。
続きって・・・一体、何の?

「『続き』って・・・何の続きの事だったのかしら」

小さく呟いたつもりだったのに、思いのほか響いてしまった。
隣のジョーの肩が揺れる。
そして、狭い艇内の空気が重くなってゆく。

―――怒ってる、ジョーが。静かに。

何故急に怒り出したのかわからないけれど。

私の疑問には答えてくれないのね。
ちょっとため息。

−4−

ギルモア研究所の地下で飛行艇を降りて、地上へ続く階段を昇ろうとしたらジョーにいきなり抱き上げられた。
彼のマフラーにくるまったままの私。

「ジョー?!私、歩けるわ」

でも降ろしてくれない。

「降ろして」

じたばたしてみても、鋼の身体は私の身体を抱えたまま、軽々と階段を昇ってゆく。
相変わらず無言のままのジョー。口元は固く結ばれたまま。

邸内に入っても降ろしてくれる気配はなかった。
博士が心配して玄関口に来てくれた時も。

「フランソワーズ!無事でよかった」
「博士・・・ありがとうございます」
「怪我でもしているのかね?」
心配そうに私を見つめる。
「あ、イエ、大丈夫なんです。でもジョーが降ろしてくれなくて・・・」
「いや、怪我がないなら良いんじゃ」
にっこりと微笑む。

「とりあえず、休ませます」

あ。口きいた。
じっとジョーを見つめるけれど、表情は見えないまま。
・・・もう。
思わずじっくり凝視してしまったら、彼の中身まで視えてしまった。
・・・?私、眼のスイッチ入れてたかしら?入れたとしたら、いつ?

軽く混乱している間にジョーは私を抱き上げたまま2階に向かっていた。

まぁ、降ろしてくれなくてもこのまま部屋まで運んでくれるなら楽だし、いいかな・・・早く着替えたいし。
・・・あれ?

「ジョー!どこへ・・・」

彼は私の部屋の前を通過し、当たり前のように自分の部屋に入った。
そうして、そっとベッドの上に私を降ろした。ゆっくりと。