−5−

ベッドに腰掛けた私を、床に膝を着いて下からじっと見上げてくるジョー。
やっと瞳を見れた。
キラキラした瞳。でも怒りに燃えているようで少し怖い。

すっとジョーの腕が伸びて、身体に纏っていたマフラーが外される。

「あ」

薄いワンピースだけになってしまって、思わず胸元をかき寄せる。

「き、着替えなくちゃ」

立ち上がろうとしたら、いきなりジョーに両肩を掴まれ、そのまま押し倒されてしまった。

「ちょっと」

押しのけようとするけれども全然話にならない。
ジョーが耳元に顔を寄せてくる。

「―――あった」

ごそ。
耳に大音響が響いて、思わず眼を閉じる。

「ホラ。見てごらん、フランソワーズ」

ジョーが手のひらに小さなメカを載せていた。

「・・・なァに、これ」

「君の耳元に埋め込まれていた視床下部刺激装置だよ」

「視床下部刺激・・・装置?」

隣に座ったジョーを見つめる。
ジョーは優しい瞳で、でも口元はへの字にしたまま続けた。

「―――まぁ、これによって積極的に男の相手をするようになっていたらしいけどね」

「!!」

そんな。

一瞬、息が詰まった。

積極的に男の相手をする?
『続きを』と言った見知らぬ男の顔がフラッシュバックした。

まさか。

思わず口元を押さえる。

まさか、私・・・

だからこんな格好をしているの?
そういえば、一緒に逃げた女の子達も、みんな大体同じような姿だった。
「大体」というのは、半裸の子もたくさん居たからで・・・

思い出すと胸がむかついた。

じゃあ、あそこに集められた女性はみんな、そのために?

−6−

思わず、傍らのジョーの腕に手を伸ばしていた。

私・・・。まさか。

ジョーの顔を見つめると、優しく見つめてくれている瞳と出会った。

「ジョー、あの、私・・・」

動揺して何を言っているのかわからない私の唇をそっと指で押さえ、そのまま唇を重ねてきた。
熱い。
軽いキスのあと、額にもキスをくれた。

「―――消毒完了」

にやっと笑う。

消毒、って、そんな言い方ないでしょう?
それに私、たぶんあの男とはキスしてないと・・・思うのよ?もちろん、確信はないけれど。

でも、いつものジョーの態度に不安な気持ちが少し楽になったような気がした。
そしてジョーの腕が伸びて、ゆっくりと抱き締められる。
彼の腕の中。
私が一番、安心できる場所。
世界中でいちばん大好きな場所。
胸に頬を寄せると、規則正しい鼓動が聞こえた。

「ちょっと今から調べるから」

髪にキスしたあと、耳元で囁かれた。

え?
調べるって、何を?

顔を上げた途端、再び唇が重なった。今度はさっきよりも深く。
―――頭の奥がしびれる。
ゆっくりと身体が倒されてゆく。静かにそっと。

調べる、って・・・そういう事なの?

確かに、さらわれた私が何をどうされていたのか調べなくてはわからないわ。
視床下部刺激装置の他にも、何かがどこかについているかもしれないし。

でも、それって・・・博士がすることだと思うのだけど。