「全く、バッカじゃない」
フランソワーズは容赦なかった。
何しろ「バカ」ではなく「バ」と「カ」の間に小さい「ツ」が入るのだ。
怒っている証拠であるが、なかでも最上級に近い。更には呆れて諦めていますよ要素も感じられ、ジョーはなんだか感心してしまった。
「ジョー、聞いてるの?」
聞いてない。感心してた。フランソワーズって凄いなあと。
しかしそんな風に言ったら最後、雷が落ちること間違いないのでジョーは唇を一文字に引き結びただ頷くだけにした。
そして頷きながらあることに気がついた。
ひとつの言葉にいろんな要素を詰め込むフランソワーズは凄いが、もしかしたら、それを読み取れる自分のほうが実はもっと凄いのではないかと。おお、もしやそれって愛の力とジョーが内心悦に入っていると氷のような声が降ってきた。
「全然反省してないでしょ」
心臓が跳ねる。
拍動の回数は完璧に管理されている筈なのにおかしい。サイボーグなのに不整脈なんて出るのか。
「反省してるよ」
「嘘よ」
「本当だ」
しかし後悔はしていない。
「あんな危ないことして」
フランソワーズの誕生日に特別な贈り物をしたかった。だからそのことに関しては一片の後悔もない。
が、しかし。
「もし間に合わなかったらどうなっていたかわかってる?」
間に合ったのだからいいじゃないかとは言えなかった。
「ごめん」
泣かせるつもりは毛頭ない。
ジョーはフランソワーズを引き寄せ優しく抱き締めた。
「もうしないよ」
いやするだろう。
「知らない。ジョーのばか」
この「ばか」は許してあげるの意味だ。
「でもありがとう…」
小さな声だった。
|