「カチューシャ」

「フランソワーズ!!」

振り向きざまに加速装置を噛んだ。
間に合わないかもしれない。
そう思う気持ちを抑え込み、絶対に間に合う、絶対に助けると自分に言い聞かせた。

次の刹那、僕は003の腕を掴み引き寄せていた。

が。

003の頭部に伸びるひとすじの閃光。

風に舞う、長い髪。

僕の頭の中は真っ白になった。

腕の中に崩れる003を抱き上げ、走る。
無事なのかそうでないのかは、後でいい。
今はともかく、この場所から移動するのが先決だった。
仲間の援護射撃のなか、ただひたすら走る。
安全圏まであと少し。

時間にしてみれば、003を救出するのにかかった時間はほんの数秒だった。
だけど。
安全圏に入っても、僕は腕の中の003の安否を確かめる事も出来ず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
きつく抱き締めた腕を緩めることもできない。
なぜなら、もし緩めて彼女の顔を見てしまったら。
怪我の程度がわかってしまう。
ビームが直撃した003の頭部がどんな状態になっているのか。・・・考えたくもなかった。

 

仲間が集まってくる気配がする。

が、顔を上げられない。
かといって、003を降ろすのも嫌だった。