「――どうした?003」

「ん・・・ちょっとね」

 

――戦闘中なのに、どうかしてる。あの日のことを思い出すなんて。

幸せで

幸せ過ぎて――辛いから、思い出さないようにしていたのに。

 

 

――あなたが消えた場所に立っているせいかしら。

 

 

心配そうに見つめる002に微笑みかける。

「大丈夫よ、ジェット」
「――そうか?なら、いいんだ」

そう言いつつも、だけどやっぱり心配そうで、小さくポツリと言った。
「――アイツ。帰ってきたらタダじゃおかねーからな。・・・心配かけやがって」

 

***

 

009が、狂った時間軸のなかに取り込まれてしまってから数ヶ月が経っていた。

どうしようもなかった。

探しようがない。

助けようもない。

本当に、手立てが何も――なかったのだ。

ただ、おそらく

彼は違う時間のなかで今も生きている。

それだけは確かだった。

しかし。

次に彼に会えるとすれば、それは。

こちらとむこうの時間軸が一致した一瞬。
それはいつ訪れるのか。
数分後か。
数百年後か。
数万年後か。
あるいは――訪れないのか。

イワンの計算によっても割り出す事はできなかった。
ただ、計算外のこと――数千万分の一の偶然が数万回重なれば、あるいは――。

 

そんな日は永遠にこない。

 

それが結論だった。

納得するしかなかった。

 

メンバーは全員、納得して――009を忘れようとさえ、した。
彼を思うのは辛すぎたから。

目の前で消えたひと。

探しにも助けにも行けず。

再び彼を失うのは、私たちには辛すぎた。
だから、・・・忘れることを選択した。

私以外の者は。

 

私は忘れない。決して。

何年先だろうが、数千万分の一の確率だろうが、そんなの全然関係ない。

だって、私たちは「必ずまた出会える」のだから。
そう――決まっているのだから。

だから、忘れない。

覚えていても、辛くない。

だって、また出会えるんだもの。

 

 

だから、平気。