Chaka様より頂いたお話です。
目の前。 ジョーが困ったような顔をした。 フランソワーズはそんな困ることを言ったかしらと思った。
「花火大会行かない?」 そう言っただけなのに。
ギルモア研究所のある市内で、今日、花火大会がある。 日本の花火は世界一。 そう言われてるから、フランソワーズは一度は見てみたかった。 どうして行きたくないの? そう言うと、ジョーはぼそりと人が多いだろ?と言った。
「……遠くから見るのじゃ駄目なのかい?」 「近くで見てみたいの」 延々と続く押し問答。 「……もう良いわ! そんなに行きたくないなら、あたし一人で行ってくる!」 ハンドバッグを掴むとフランソワーズはその勢いのまま、研究所を飛び出した。ちょうど来たバスに飛び乗る。 ジョーのばか。 じわりと目頭が熱くなった。 駄目よ。 ジョーが行きたくないのは人混みが嫌いなだけであって、あたしと出かけるのが嫌な訳じゃないんだから。 自分に言い聞かせる。
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バスを降りて、歩いて花火大会の会場に向かう間、人混みの中、何故かカップルばかり目についた。 と。 いきなり肩を叩かれた。 驚いて、フランソワーズがばっと振り返ると。 そこにはジョーが居た。 思わず、フランソワーズの口がぽっかんと開いた。 「……どうやって来たの?」 どこかとんちんかんなセリフがフランソワーズの口から滑り降りた。 「バスで」 ぽつりとジョーが呟いた。 車で来なかったの?と聞くと、駐車場が無いだろうと思ったからとこれもぽつりと呟いた。 地上最速のジョーがバスで。 ……あたしを追って来てくれたの? そんな言葉をフランソワーズは思わず呑み込んだ。 「……来るなら、最初っから来ればいいのに」 そう言うと。 「うん……」 と言ったきり、ジョーは黙ってしまった。 じっとしてても埒が無いので、二人は黙って花火大会の会場へ向かった。
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