花火大会会場に着いて、適当にこの辺かなと陣取った。
ざわざわと花火を待つ人の声。 盛り上げようと頑張るアナウンスの声。
時折感じる、川面を渡る風が心地よかった。

「……もっと暑いかと思ったんだけど、良かったわ」

フランソワーズはそう言いながらハンドバッグから扇子を二つ出した。
一つを受け取りながら、思わずジョーの瞳が細まった。

黙って、二人、ぱたぱたと扇子で仰ぐ。

「……良いですかー? 5・4・3とカウントを始めたら、一緒にカウントしてくださいねー」

アナウンスの声が響き渡る。

「5!・4!・3!……ですよー? 良いですかー?」

つい、本番だと思って、カウントに釣られたらしい、ひと組のカップルが顔を見合わせて、くすくすと笑った。
せーのっとアナウンスの掛け声で、カウントダウンが始まった。
スタート!という声とともに大きな花火がどーんと上がった。

 

 

 

 

次々と上がる花火に、周りから、おお、とか、きゃー、とか歓声が上がる。
気が付くと、ジョーも歓声を上げていて、フランソワーズは思わず目を丸くした。
その後も歓声を上げて。 瞳が何だかきらきらとしている。

こどもみたい。

そう思った。

こういうのが好きなら最初から来ればいいのに。

もう一度言いそうになった。

が。

ジョーのあまりに楽しそうな姿にフランソワーズは負けた。

良いわ、もう。

フランソワーズは花火を楽しむことにした。