翌16日。午前10時。 それにしても、まさか自分が誕生日にかこつけてこんな行動に出る日がくるとは思ってもいなかった。 誕生日だから、会いに来た。・・・なんて言ったら、どんな顔をするだろう。 まさかパリに来るとは思っていまい。 ――そろそろ行くか。 席を立つのと同時に携帯電話が振動した。 「え!?何だって!?」 「いいから!早くキャンセルしてこっちに来い!」
――何だって?
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15日11:50発の日本直行便に乗ったフランソワーズは、16日6:50に成田空港に到着した。 帰りの便は決めていない。
サーキットに着いたのは9:30だった。 ジョーはどこにいるのだろう? ピット内を見てみたが姿がないので、コースに出ているのかなと思い、コーナー前のフェンスで立ち止まりしばらく待ってみた。 すると。 「あれっ!?もしかして、アルヌールさん!?」 「――?」 振り返ると、よく知っているジョーのスタッフたちだった。 「えええ、どうしたんですか」 驚くというより、怒ったように訊かれ、フランソワーズは気持ち退き気味で答えた。 「あの、・・・ちょっと時間があったので」 何故そう決め付けるのかわからなかったが、とりあえず頷く。 「うっわ、大変だ」 口々に言って、携帯電話を取り出したり腕時計を見たり天に祈ったりと慌しい。 「あの・・・?」 まるっきり無視された形のフランソワーズは、呆然と見ているだけだった。
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