「Tanabata night」

 


「――知ってるかい?なぜ一年に一度しか会えないのか」
「異性が同居しない星なんでしょう?」

フランソワーズが真面目な声で言うと、電話の向こうの相手は大笑いで答えた。
思わず耳から離し、眉をひそめて携帯電話を見つめる。海の向こうの彼の声は、しばらく笑い声だけとなり・・・そして徐々に収まった。

「もうっ。ジョーったら笑いすぎ」
「――だってさ。あんまり真面目に言うからっ・・・」

再び笑いの発作に襲われるジョー。しかし、続く声に何とか自制した。

「ジョー?」
「ごめんごめん。ええと――なんだっけ?」
「なぜ一年に一度しか会えないのかっていう話よ」
「・・・ああ。そう、そうだったね」

大きく深呼吸して続ける。

「・・・織姫と牽牛は、それぞれ仕事があるのに、恋に落ちてからはそれをさぼってお互いしか見つめなくなってしまったんだ。だから、・・・恋にかまけて仕事をおろそかにするなら、一年に一度しか会えなくするぞという」
「まあ!それってひどいわ!」
「どうして。妥当な話だと思うけど?」
「だって・・・恋してそのひとしか見えなくなってしまうのは悪いことじゃないわ」
「うーん。どうかな。でも仕事はしなくちゃ駄目だろ」
「ジョーにはオンナゴコロがわからないのね」
「うん?わかるよ?」
「嘘よ。わかってないから、そんな事言うのよ」
「酷いなぁ。こうして電話してるのに、どうしてそんな意地悪言うんだろう」
「だって・・・」

会いたいもの。
というフランソワーズの声は、発せられず胸の奥にとどまった。

 

 

「酷いなぁ。どうして電話したと思うんだい?――もっと会うための相談なのにさ」


一年に一度ではなくて、もっともっと会うために。

 

 

 

 

 


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