「恋人たちの日」
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 何も七夕の日に喧嘩しなくたっていいと思う。 
 
 
 いつも仲良しだった? それとも、大事なその日を喧嘩して過ごした? あるいは、喧嘩中だったから会いにも行かなかったとか? けれどそれならば後悔しただろう。 
 なにしろ、…くだらない喧嘩なのだ。 
 
 
 意地悪なひとに仕込まれた意地悪。 「フランソワーズ。ほら、きみの好きなケーキ買ってきたんだ。それからほら、好きな花も。…これだったよね?」 あんまり困ったように言うから、フランソワーズは吹き出してしまった。 「もう!…ばかね」 喧嘩の後、彼女の「好きなもの」ばかりを持ってきた彼。 随分苦労したのだ。 頑張ったのだ。 でも彼女にとって一番好きなものは彼自身だったから、その苦労は報われないままだった。 
 
 せっかくの逢瀬なのだから。 
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