「ふさわしい相手は誰?」
〜2008年夏休み特別企画の番外編です〜
2008年夏休み企画の本編はこの辺りからドウゾ
「どうしてそんなに海に行くのを嫌がるのかわからないな」 そう言って背もたれにゆったりともたれ、胸の前で腕を組む超銀ジョー。 「どうして、って、そりゃ・・・」 僕の大事なフランソワーズを他の奴に見せてたまるもんか。と、胸の裡で思う新ゼロジョー。 「――自信がないんだ?」 ニヤリ。と笑う超銀ジョー。 「彼女を連れて歩いている自分が彼女にふさわしいかどうか、自信がないんだろう?」 椅子をユラユラさせながら、奥にいる二人のフランソワーズの方を見つめ、声をかけた。
ここは新ゼロ組の住んでいるギルモア邸のリビングルーム。
「さあ。どうかしら」 自信満々で訊いたものの、あっさりとしたフランソワーズの答えに超銀ジョーは椅子ごとひっくり返った。 「ふ。フランソワーズ?」 けれども超銀フランソワーズはつんと横を向いたまま、彼の方を見ようともしない。 「フランソワーズ。どうかしら、ってどういう意味だよ」 と抑えた低い声で問うた。 「アラ。言葉通りの意味よ」 けれども、やはり超銀フランソワーズは横を向いたまま彼の方を見ない。新ゼロフランソワーズは目の前の二人をはらはらしながら交互に見つめ、そしてある事に気がついた。 ――もしかして、この二人って・・・実はここに来る前からケンカ中? そう思って新ゼロジョーの方を見ると、小さく手招きしていたのでそうっと席を立った。そうして、彼の腕の中におさまると小さく訊いた。 「ねえ。あの二人ってケンカ中だったみたいよ?」 二人は黙って、向こうにいる超銀のふたりを見つめた。
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「――フランソワーズ。いい加減に機嫌を直せよ」 冷たい声でつんとして言われる。 「・・・・」 ジョーは小さく息を吐くと、彼女の隣に腰掛けた。 「一体、何を怒ってるんだい?」 とりつく島もない。ジョーは黙って、昨日から今日までの事を思い返してみた。 「・・・君のこと、大食いだって言ったこと?」 夕食を山盛り食べたので、ついそう言ってしまったのだった。 「そんなの、前から言ってるわよアナタは」 違ったらしいので、夕食後の事を思い返す。 「・・・無理矢理、服を脱がせたこと?」 「・・・バスルームで、その、」 凄い勢いで遮られる。 「じゃあ、寝ている時・・・寝返り打った時に君にぶつかった、とか」 ジョーは頭をぐしゃぐしゃ掻いた。 「駄目だ。わからない。――降参」 するとフランソワーズはその蒼い瞳で冷たくジョーを見つめた。 「・・・本当にわからないのね?」 ジョーのその言葉にフランソワーズの眉間に皺が寄った。 「何よ、その開き直った態度」 がたん。 「よくもそんなことが・・・っ」 怒りで握った拳が震える。 「暴力反対」 クッションを抱えながら訴えてみる。が、フランソワーズの怒りは更に加速するのだった。 「待て。――待て、ってば。おい」 するとフランソワーズの瞳に大粒の涙が盛り上がった。 「え!?何で泣くんだよ」 目にいっぱいに涙を溜めたまま睨みつけてくるフランソワーズ。心なしか、髪の毛も逆立っているように見えるのだった。怒りのオーラを背にして。 「アナタ、昨夜――」
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「――ねえ。大丈夫かしら、あのふたり」 新ゼロジョーの腕の中で、新ゼロフランソワーズが心配そうに言う。 「ん・・・大丈夫じゃない?たぶん」 欠伸まじりに答えるジョーを見つめ、フランソワーズは彼の頬を引っ張った。 「いてて。何だよ」 その顔を見つめ、ジョーはフランソワーズの手を掴み、ちゅっとキスしてから、 「真面目に言ってるんだよ。・・・心配しなくても、ちゃんと仲直りするさ」 自分たちのケンカとは全然違う様子に、不安そうに顔を曇らせる。 「・・・むこうのジョーはあなたみたいに優しくないみたいだし・・・」 なんだよ、気になるじゃないかと言いながら、ジョーはフランソワーズを抱き締める。 それは、その時になったらわかるわ。 胸の中で言って、フランソワーズはジョーの肩にそうっともたれた。 そんな時が来るとは思えないけれど・・・ね。
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「君には、もっとふさわしい相手がいるんじゃないか、って言ったのよ!!」 とうとう涙がこぼれ落ちた。 「しかも、――ベッドの中で!!」 後は声にならない。 「そ、それなのに、アナタときたら、何事も、なかったみたいにっ・・・」 ジョーはクッションを脇に置くと立ち上がった。 「――フランソワーズ」 伸ばした腕をかわされる。その指先さえもかすらない。 「・・・フランソワーズ。僕はそんな事言ってないよ」 けれどもフランソワーズは彼の言葉全てを拒否するように、頭を振った。 「言ったわ。だから私は、ジョーは私に飽きちゃったんだ、って思って」 先刻まで怒っていたのが、今は泣いているのだった。声も弱々しく震えている。 「――フランソワーズはどうしたいわけ」 フランソワーズの目を見据えて続ける。 「あれは。――僕が君を独り占めしていてもいいのか、自信がなくなって、だから・・・」 きょとんと目をみはるフランソワーズから目を逸らさずに言ってしまう。 「――落ち込んでいたのは僕のほうさ。君は僕の言葉を否定もせず、そのまま眠ってしまったんだからね」 にっこり笑うジョーを見つめ、再びフランソワーズの目から涙がこぼれた。 「・・・だって。どうしてっ・・・」 ジョーは組んでいた腕を解くと、胸に飛び込んできたフランソワーズをしっかりと抱き締めた。 「ね。――言ってくれないか。ちゃんと」 耳元で言われ、鼻をすすってから小さな声で言う。 「・・・私に釣り合うのは」
*** ***
30分後。 やっと収拾のついた超銀組。
残されたふたりのジョーは、しばらく無言でいたのだったが、新ゼロジョーがふと口を開いた。 「さっきの話だけど・・・ベッドの中で、って言ってたよな」
「あら、秘密のお話?」 ニヤリと笑った超銀ジョーに、ぴくりと頬を引きつらせたのは超銀フランソワーズ。 「・・・何か変なコト言ってないでしょうね」 そうして改めて新ゼロジョーの方を向いて 「――ベッドの中のフランソワーズが物凄く綺麗で可愛かったから。・・・っていうのは別に変なコトじゃないよな?」 と言った。 「ばかっ!!」 両肩を突き飛ばされ――再び椅子ごとひっくり返った超銀ジョーなのであった。
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