嫌われている。

最初は、そう思った。
でも、よく考えてみれば「リーダー」である彼が、そんな個人的な理由からメンバーの差別をするはずがなかった。

と、いうことは。

常に私と一定の距離をとっている。

と、いうことは。

 

と、いうことは――つまり?

 

彼への気持ちを自覚してから、私はずっと――世間の恋した女性全てが、真っ先に思うことと同じ事を考えていた。

彼に好きなひとはいるのだろうか?
恋人は?

訊きたいけれど、訊けない。
知りたいけれど、知りたくない。

二律背反な考えを胸に、彼と他のひととの会話に耳をすます。

――お前さん、日本に置いてきたひととかいるんじゃないのか?
――日本に置いてきたひと?
――ああ、恋人とか妻とか

けれども彼はいつも、肯定も否定もせず、ただ――曖昧に微笑むだけだった。

好きなひとはいるの?
そのひととは付き合っているの?
未来の約束はしているの?

気になって気になって――考えれば考えるほど、胸が苦しくなって彼への想いが溢れそうだった。

 

彼が私と一定の距離をとっているのは・・・私が女だから。
だから、警戒している。
好きでもない女性と安易に距離を縮めて――相手が誤解したりしないように。
間違っても、彼のことを好きになったりしないように。
何故なら、彼には――日本に大事なひとが居るから。たぶん。

誰にも何も言わないけれど、それはきっと・・・とても大事にしているから。だから、言わないで守る。
言ったが最後、自分の大事なひとが私たちと同じ運命に巻き込まれかねないとわかっているから、だから言わない。

――そんなに大事に想われているひとって、どんなひとなのだろう。

うらやましかった。

きっと、そのひとには優しく名前を呼ぶのだろう。――優しい声で。愛おしそうに。

優しい瞳で。

戦場で私を守るその腕で、優しく優しく抱き締めるのだろう。

 

私には、しない。
誤解されたら困るから。

 

だから、私は――この想いを彼に気付かれてはいけないのだ。絶対に。