嫌われている。 最初は、そう思った。 と、いうことは。 常に私と一定の距離をとっている。 と、いうことは。
と、いうことは――つまり?
彼への気持ちを自覚してから、私はずっと――世間の恋した女性全てが、真っ先に思うことと同じ事を考えていた。 彼に好きなひとはいるのだろうか? 訊きたいけれど、訊けない。 二律背反な考えを胸に、彼と他のひととの会話に耳をすます。 ――お前さん、日本に置いてきたひととかいるんじゃないのか? けれども彼はいつも、肯定も否定もせず、ただ――曖昧に微笑むだけだった。 好きなひとはいるの? 気になって気になって――考えれば考えるほど、胸が苦しくなって彼への想いが溢れそうだった。
彼が私と一定の距離をとっているのは・・・私が女だから。 誰にも何も言わないけれど、それはきっと・・・とても大事にしているから。だから、言わないで守る。 ――そんなに大事に想われているひとって、どんなひとなのだろう。 うらやましかった。 きっと、そのひとには優しく名前を呼ぶのだろう。――優しい声で。愛おしそうに。 優しい瞳で。 戦場で私を守るその腕で、優しく優しく抱き締めるのだろう。
私には、しない。
だから、私は――この想いを彼に気付かれてはいけないのだ。絶対に。
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