「003!一体きみは何を――」
それが、最後に聞いた彼の声だった。
「――フランソワーズ!気がついたか」 目を開けると、心配そうに集まっているみんなの顔が見えた。 ジェットがいる。その横にはグレート。それから、張々湖。そのうしろにはジェロニモ。 「全く、お前さんも無茶するぜ」 呆れたように言ったのはアルベルト。 「でもまぁ、気がついたんだし。叱るのは後でいいんじゃない?」 ね?とウインクするのはピュンマ。 「けどよ」 グレートがアルベルトの肩に手を置く。 「ホラホラ、出た出た」 そのままみんなをせきたてて部屋から出て行く。 「全く、無茶するにも程があるネ!」 自分に何が起きたのか――は、自分が一番よくわかっている。 あの時、彼の手から逃れて走った私を――倒れた私を庇ってくれたのはジェロニモと張々湖だった。 「あの坊やは、自分ひとりでも大丈夫だったのにって言って荒れてるあるネ」 目に見えるようだった。だから、苦笑するしかない。 肩を直撃されてあっさり倒れた私。 そのあと、私は自分がどうなったのかも、彼がどうしたのかもわからない。 「あの・・・ジョー、は?」 姿が見えないのが気になった。 すると、張々湖とジェロニモは一瞬お互いの視線を交差させた。 「心配ない。ジョー、無事」 ジェロニモの声にほっと胸を撫で下ろす。 「そう。良かった」 姿を見せないのはどうしてだろう――とは、思うものの、さっき張々湖が「荒れてる」と言っていたから、きっとここには来ないだろうとは予測できた。 「何しろ、あの坊やはずーっと『フランソワーズが目を醒ましたらただじゃおかない』って言いっ放しあるネ」 漫才コンビのように、上手に合いの手をいれながら二人が話す。 私はそんな二人の会話を微笑みながら聞いていた。 ジョーが私なんかを気にしているわけがない。ましてや心配なんか。 その証拠に、二人の会話のなかの彼は、私のことを名前で呼んでいる。 そんなの有り得ない。 だからこれは、優しい二人の優しい嘘。 きっとジョーは今頃――私の事なんてすっかり忘れて――そもそも、彼の思考の片隅にさえ上る理由なんてないのだから――次の作戦のことを考えているだろう。
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