帰投中のドルフィン号の中。 「お疲れさま」 さかさまに上から覗き込むと、眠たそうな声が返ってきた。 「・・・ん。フランソワーズ」 とはいえ、何かあってもジョーのせいにはならない。何しろ、他のみんなは見張りをジョーに任せたまま遊んでいるのだから。 「・・・なあに?ジョー」 隣のシートに座った私をじいっと見つめる褐色の瞳。 「ちゃんと前を見てなくちゃ、・・・」 ジョーはゆっくりと立ち上がると、突然少し屈んで私の唇を奪った。 だけど。 「・・・ジョー。駄目よ、こんな所で」 私の小さな抗議に耳を貸さず、ジョーは至近距離で微笑んだ。 「――フランソワーズが悪いんだよ。・・・そんな口紅をつけているから」 そうして今度は先刻よりも――本気のキスだった。
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