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約束の時間より30分も早く来てしまった。我ながら、そんなに楽しみにしているのかと呆れてしまう。 緑の葉とピンクの花が風に揺れるマロニエの樹に囲まれた公園。広場には噴水があって。 僕たちがパリで会う時は、いつもここと決めていた。
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30分が経った。つまり、約束の時間ジャストだ。 ベンチから立ち上がり、彼女がやって来るであろう方を見つめる。
――5分経過。姿は見えない。 おかしいな。・・・まぁ、少し遅れることだってあるだろう・・・
――10分経過。まだ姿は見えない。 うろうろと噴水の前を行ったり来たりする。 オーケー。まだ10分だ。きっと何もないさ。
――30分経過。待ち合わせ時間は合ってるよな? 急に不安になり、手帳を取り出し確認する。――うん。合ってる。午後2時と大きく赤い字で書き込んであった。 どうしたんだろう?彼女が時間を勘違いしているのだろうか?
一時間が経過した。 僕は、公園の出入り口を全部確かめて回った。どこか――広場ではなく、別の場所で待っているのかもしれないと思ったからだ。 ――おかしい。 何の連絡もなく、彼女が遅れる事などなかった。 繋がらない。 電波の届かないところにいるか、携帯の電源が入っていないというアナウンスが繰り返される。
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何もせず、ただ待っているだけしかできなかった。 事故や事件の類に巻き込まれたわけではない。 と、なると他に考えられることは・・・ ばしゃんと目の前に落ちたボールを取ろうと噴水前で屈んだとき、胸ポケットからするりと携帯が飛び出した。 「――あ」 あっという間にそれは水中に沈んでいった。 「あーあ」 口々に言われる。 水中から拾い上げた携帯は、見事に使い物にならなくなっていた。
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彼女のアパルトマンは知っていたので、迎えに行こうとも思ったが――やめた。 何故なら、もし・・・彼女が留守だったら? フランソワーズ。 もしかして君は、・・・ここには来ないのだろうか。 一番最近会った時の事を思い返してみる。 ――否。違う。 彼女はそんな子じゃない。 例え、僕に対して何か不満があったとしても、そういう陰湿な仕返しはしない。ちゃんとその場で言うか、もしくは鉄拳制裁をしてくるはずで・・・そして、絶対に後に引き摺らない。 そう思ってはみても、いまここに彼女がいない理由にはならなかった。 フランソワーズ。 いまどこにいるんだ。 僕との約束を忘れてしまったのか。 それとも・・・ 僕との約束なんて、君にとっては取るに足りないものなのか?
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