たぶん、ひとりでフランスに行ったのだろう。

一緒に行こうといったのに、待ちきれなかったのだろう。きっと。

フランソワーズがいなくなって、どうしたのかと皆に訊かれ僕はそう答えた。
それだけを繰り返し繰り返し。
みんな、最後には少し首をかしげ憐れむように笑うと去って行った。

――憐れむように。

なぜ?

僕はそんなふうに見られる覚えはない。

 

「捜しに行かないのか?」
「なぜ?」
「・・・心配だろう」
「捜すなって言われたんだ」
「だから捜さないのか?」

ハインリヒが呆れたように嗤う。

「本気でそう思っているなら、お前は永遠にフランソワーズを失ったままだろうよ」

永遠に?

「あのな。ひとつ教えてやる。女がわざわざ「捜すな」と言っていなくなるのは捜してくれってことだ」

 

 

 

***

 

 

 

フランソワーズはどこだ。

 

フランソワーズが行きそうな場所は――どこだ。

 

 

みんなの一致した見解では、どうやらフランソワーズはまだ日本にいるのだという。なぜそう思うのかは教えてもらえなかった。
ただ、僕に課せられたのは自力で捜せということだった。

僕ひとりでフランソワーズを捜す。

いったいどこからどう手をつけたらいいのかわからないと言うと、

「あるだろう?彼女の好きな場所とか――思いいれのある場所が」

そのくらい思いつくだろう、ずっと一緒にいたんだからなと念押しされた。

果たしてそんな場所が――あっただろうか?

 

出発前の、あの浜辺だろうか。

 

そう思ってまず最初に向かったけれど、いなかった。

当たり前だ。
こんな近くにいるわけがない。

みんなは、フランソワーズはまだ日本にいると確信しているようだったけれど、僕は半信半疑だった。
きっぱりと自分の意見を言うフランソワーズが、いつまでも日本でぐずぐずしているわけがない。
きっと今頃は空の上だ。だから、こんなところを捜しても――捜したって、意味がない。

意味がないのに。

どうして僕はこんなに――走っているのだろうか。
加速装置も使わずに、息をきらして。

自分のちからだけで。