たぶん、ひとりでフランスに行ったのだろう。 一緒に行こうといったのに、待ちきれなかったのだろう。きっと。 フランソワーズがいなくなって、どうしたのかと皆に訊かれ僕はそう答えた。 ――憐れむように。 なぜ? 僕はそんなふうに見られる覚えはない。
「捜しに行かないのか?」 ハインリヒが呆れたように嗤う。 「本気でそう思っているなら、お前は永遠にフランソワーズを失ったままだろうよ」 永遠に? 「あのな。ひとつ教えてやる。女がわざわざ「捜すな」と言っていなくなるのは捜してくれってことだ」
***
フランソワーズはどこだ。
フランソワーズが行きそうな場所は――どこだ。
みんなの一致した見解では、どうやらフランソワーズはまだ日本にいるのだという。なぜそう思うのかは教えてもらえなかった。 僕ひとりでフランソワーズを捜す。 いったいどこからどう手をつけたらいいのかわからないと言うと、 「あるだろう?彼女の好きな場所とか――思いいれのある場所が」 そのくらい思いつくだろう、ずっと一緒にいたんだからなと念押しされた。 果たしてそんな場所が――あっただろうか?
出発前の、あの浜辺だろうか。
そう思ってまず最初に向かったけれど、いなかった。 当たり前だ。 みんなは、フランソワーズはまだ日本にいると確信しているようだったけれど、僕は半信半疑だった。 意味がないのに。 どうして僕はこんなに――走っているのだろうか。 自分のちからだけで。
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