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――どうして・・・?
紫色の瞳が揺れる。一緒に行けない僕を責めるかのように。
どうして、って――それは。
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目を開けると見慣れた天井があった。
僕は手を伸ばし、「一緒に行けない理由」を抱き寄せ・・・ようとして、空を切った。
「――あれ?」
昨夕まで――否、確かについ先刻まで――僕の腕の中で頬を上気させていた彼女の姿が消えていた。
「ン・・・フランソワーズ?」
伸びをして体を起こし、改めて部屋を見回す。が・・・いない。
一瞬、全て夢だったかと思いかけ、自分の腕に残る彼女の爪の痕を見つけ、現実だったと安心する。
しかし、解せなかった。
だったらどうしてここにいないんだ?
いつもはここに、隣に――居るのに。
そして僕の腕の中で恥ずかしそうに僕を見つめ・・・おはようのキスを交わすのに。
ベッドから降りて服を身につけようとして気がついた。
きちんと畳まれてある衣類が用意されている。
昨夕の、脱ぎ散らかしたモノではなく、洗濯されたばかりの。
いつもは、僕と彼女の衣類が床で一緒くたになっており、これは僕の、これは君の、と分け合って・・・
これは要らないよね?と下着を隠す僕に、ヤダ返してと本気で怒る君とじゃれあうのに。
ともかく、洗い立ての衣服を身につけて、僕は部屋を出た。
***
そこはかとなく漂う、コーヒーとシナモンの香り・・・――は、なくて、キッチンもリビングもシンと静まり返っていた。
ヒトの気配もない。
ついでに言うと、彼女の荷物も消えていた。
「――嘘だろ」
ことここに至って。
ようやく僕は、自分の置かれている状況を把握した。

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