「ウナギの日」
あれ? そういえば、土用の丑の日っていつだったっけ?
すると 『今年の土用の丑の日は7月30日』 と出てきた。 そうか、7月30日…あれ?
――ウナギを食べた覚えがない。
ということはつまり。 「食べてないんだ…」 ウナギを食べていない。食べ損なったっ。 もちろん、食べたければその日に限らず好きな時に食べれば良いのだからむきになる必要は無いはずである。が、 僕は日本人だから、丑の日にウナギを食べたいんだっ そう――それに。 既に「丑の日にウナギを食べたい」主旨はどこかにいってしまっているが、ジョーは気付いていない。
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「――というわけなんだ、フランソワーズ。うっかり忘れちゃったんだね?でもまあ、よくあることさ」 するとフランソワーズはきょとんとしたまま 「忘れてないわよ?」 と言った。 「えっ?」 おかしい。 ならば僕は食べたのに覚えてないし思い出せないのか。 「あ、ジョーには出してないから」 なんで。 「僕、ウナギは好きだよ?」 嫌いなのかと気を遣ったのかもしれない。 「ええ。知ってるわ」 え、じゃあ… あまり考えたくはないけれど、ジョーはそれしか思い当たらず気持ちが沈みこんだ。 黙り込んだジョーを見つめ、フランソワーズはちょっと頬を染めて言った。 「だって…ウナギって滋養強壮にいいんでしょう?そんなの、ジョーが食べたら大変だもの」 まっすぐ視線を返され、フランソワーズは目を逸らせもじもじとしながら 「だって最近のジョーって…」 突き飛ばされ、フランソワーズはキッチンから出て行ってしまった。 「なっ…なんだよもう」
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もうっ、ジョーのばかばかっ だって、最近のジョーってなんていうか今までのただ回数で誤魔化しているのと違ってその、――なのに、これ以上っ…!
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