身体が燃え始めて炎に包まれた僕と002。 次に思い出すのは、ベッドの上だった。 「あれから一ヶ月過ぎたのよ」 と、君は目に涙をいっぱいにためて微笑んだね。 でも。 僕の頬にふわりと触れた君の唇の感触と、君の涙の温かさ。 僕は、生きている。 生きているんだ。
「002はっ!?」 身体を起こしかけた僕を優しく押し戻し、 「大丈夫。ちゃんと隣にいるわ」 首を巡らせると、確かに隣のベッドには002が――ジェットがいた。 「お前ら、運がいいぜ」 そう言ってニヤリと笑って見せた。 「・・・ほかのみんなは・・・?」 掠れた声。これが僕の声。 「みんな無事よ」 枕元で僕の髪を直しつつ、君が微笑む。 「006は、今お店に行ってるわ。007はお手伝いに」 渋い顔をして004が続ける。 「ったく、もうそんな必要はねえって言ってるのに聞きやしない」 そんな彼に君は笑う。 「みんな不安なのよ」 話しながらも君は僕から目を離さない。 「二人が完全に治るまで・・・何かしていたいのよ」 そうして黙る。 「みんなね。あなたがひとりで魔人像の中にいる、って001から聞いた時。誰も何も言わなかったけれど、心の中では、どうして自分じゃなくて009なんだ。どうしてひとりで行かせたんだ、って・・・思っていたのよ」 えっ。 ・・・そうなのか? 一瞬僕から視線を外し、君は004を軽く睨んだ。 「――もう。いいのよ、言わなくて!」 ちょっと膨れて。 「気付いたようじゃな。009」 博士が入って来た。 「意識が戻ればもう大丈夫じゃ。002も昨日、意識が戻ったし。だから009も大丈夫だと言っておるのに、二人ともきかなくてな。離れようとせんのだ」 002も意識が戻ったのか。良かった。 「まだ身体の感覚が戻っておらんから、動きもぎこちないだろうが、何、あと数日で動けるようになる。心配無用じゃ」 身体の感覚。 「003。気持ちはわかるが、そのう・・・009にはわからんよ」 博士が申し訳なさそうに言う。 わからないって・・・何、が? 僕は博士の視線を追ってみた。するとそれは僕の腕で、手のひらには君の手が滑り込んでいた。 ふっと哀しく曇る蒼い瞳。 「だって・・・」
――あの時、僕の手は握り締めた君の指からすり抜けた。
「フランソワーズ。もう・・・居なくならないから」 たぶん――きっと。 すると、君の瞳は涙でいっぱいになってしまった。 「居なくなったら、許さないんだから・・・!」
その後すぐ、僕は再び記憶を失った。博士が薬を打ったらしい。 でも。 君が僕の手を握っていてくれる。
今度の眠りは、きっと心地良いだろう。
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