桜の花が揺れる。

 

 

「――フランソワーズ!」

 

桜の花びらが降りしきる中にあなたが立っていた。

 

「――また、思い出していたの?」

ゆっくり近付いて私の頭を抱き寄せる。自分の胸に押し付けるようにして。

 

あなたは、いなくならなかった。

私の前から消えなかった。

 

――けれど。

 

あなたが消えてしまうと覚悟したあの一瞬は、いつまでも私の心から消えはしない。

おそらくずっと抱えていくのだろう。

空を見るたびに思い出して。
桜を見るたびに思い出して。
そして。

 

「僕はいなくならないよ」

桜の花と一緒にあなたの声が私を包む。

「いなくならないから――」

小さく繰り返す。