ずうっと前、君と仮定の話をした事があったね。
もし、お互いが心変わりをしたらどうする・・・って。
どうしてそういう話の流れになったのかは忘れてしまったけれど。

 

最初に「僕の場合」を話した。
もし君が、僕の知らない誰かを選んだら、僕はどうするか。

君は、しばらく僕の顔をじっと見つめたあと笑って言った。

「やぁよ。絶対、ありえないわ」
だから、仮定の話だってば。
「駄目。考えられない」

あんまり否定するものだから、全然話がすすまない。
まぁ、確かにそんな仮定の話をする必要もないんだけど。

だけど・・・。

結局、何度目かのキスのあとに君は言った。

「だって、あなた、絶対泣くでしょう?それも、たくさん。朝から晩まで、毎日毎日泣いて・・・
何も食べず、眠りもせず・・・病気になってしまうわ」
違う?と、蒼い瞳が僕を見る。

凄いな。・・・当たっているよ。

だって僕は、君がいなくなったら・・・君がいなくなった後の自分なんて、興味が無いのだから。
自分自身も、世界も、どうなったって、いい。

「だから私は、あなたから去ったりなんてしないの」

僕の首筋に腕を回して続ける。

「だって・・・あなたが死んでしまうもの。それはイヤ」
「そうだね。・・・死ぬね。きっと」
「駄目よ。そんなの許さないわよ」
「だから、いなくならないで」
「ならないわよ。・・・いなくなるかもしれないのは、ジョーのほうでしょ?」