そうして、次に「君の場合」の話になった。
もし僕が、君の知らない誰かを選んだら、君はどうするか。

僕は呆然と君の顔を見つめた。

「君は・・・泣かない、よね?」
「そうね。泣かないわ」
「そして・・・僕を笑顔で送り出すんだ、きっと」
「そうね。きっと」
「そして、僕がいなくなった後にひとりで泣くんだ」
「・・・たぶん」
「どうして泣かないの」
「うーん。・・・私は、あなたが幸せなら、それでいいのよ」
わかる?と、蒼い瞳が問いかける。

わかりたくない。そんなこと。

どうして君はいつもそうなんだ。
いつもいつも・・・・いつも!

 

 

だって、あなたの「お仕事」だもの。
きっと、その続きに違いなくて。

あなたが胸に庇うのは、私ではない誰か。
あなたが名前を呼ぶのも、私ではない誰か。
あなたが探すのも、私ではない誰か。

「仕事」とはわかっていても、繰り返される光景。
慣れたフリをしていたけれど、本当は毎回毎回、苦しかった。
辛かった。
だってあなたは私を見ない。
名前を呼ばない。
探さない。

その度に泣いていたら、私はとても泣き虫になってしまう。
だから。

泣かないことに決めたの。

あなたに何があっても、泣かない。
あなたが何をしても、泣かない。

絶対に、泣かない。って。