「どうしてジョーが泣くの?」
僕の目尻をそっと拭う白い指。
「・・・だって。君が泣かないから」
「だから、あなたが泣くの?」
「うん」
「・・・ばかねぇ」
そして、僕の頬にキス。
頬を手のひらで包みながら。
「私が泣いたら、困るでしょう?あなた、行けなくなってしまうもの」
「僕はどこにも行かない」
「ううん。行くわ、きっと」
「行かないよっ!」
フランソワーズ。
君は意地悪だ。
わざと、そういう事を言うんだよね?
「でも・・・本当よ?」
嫌だ。聞きたくない。
「私はあなたを困らせたくないの。ただ、あなたが幸せなら、それでいいのよ」
ああ、フランソワーズ。
それ以上、何も言わないように唇をふさいでしまう。
僕が幸せならそれでいい、だって?
君と離れた僕が、幸せになんてなれるわけがない。
けれども。
唇を離した後で、君は更に言った。
「そして、あなたが去ったら・・・私は他の誰かと一緒に過ごしていくわ」
何だよ、他の誰か、って?
「あなたの知らないひと。・・・仲間じゃなくて」
「駄目だ、そんなの」
「あらどうして?あなたは誰かと行ってしまったんだし・・・。
私に一人ぽっちで過ごせというの?」