そんなわけで、ゼロゼロナンバーサイボーグたちの脳と副腎、そして生殖臓器は保たれているのだった。
だから、未来からやって来たという彼らが「きみたち二人は私の遠いご先祖さまなのだ」と言っても違和感はなかった。
ああ、そうなんだ・・・という感想を素直に抱き、その言葉の意味することに気がついたのは、その時よりもずっと後になってからだった。

 

「――ねえ、ジョー。私たちが彼らの先祖ってことは、つまり彼らは私たちの子孫って事よね?」
「そうだね」
「ということは、つまり・・・」

フランソワーズがじっとジョーを見た。
ジョーもフランソワーズを見つめている。

「・・・その、私とあなたが」
「うん。そういう事になるよね」

さらりと言うジョー。口元には笑みが浮かんでいる。

――そういう事になるよね、って・・・本当にわかっているのかしら。

フランソワーズはニコニコしているジョーを訝しそうに見つめた。

「その、私とあなたが」
「うん。ずっと一緒にいる、っていう意味だろう?」
「え。う・・・ん。そう、ね・・・?」
「――ずっと一緒にいるのは当たり前なのになあ」
「当たり前?」
「そうさ。僕たちはゼロゼロナンバーサイボーグ。9人しかいない大事な仲間だ。離れるなんて事は無い」

ああ、そういう意味・・・。

フランソワーズは内心頭を抱えた。

わかってない。ジョーは全く、少しもわかっていないのだ。

「あの、でも、子孫ってつまりその・・・」

食い下がってみた。

「その・・・、あなたと、私、の」
「ん?」

きょとんとしたジョーの目。それを見つめ、フランソワーズの頬は熱くなっていった。

――私ったら。ひとりで何を言っているのかしら?

「僕たちの子供って事だろう?・・・あれ?違ったっけ?」

ダメだなあ僕は。と頭を掻くジョー。

「ち、違ってないわ。合ってるわよ。・・・」

だってそういう意味だもの。

「何だ、良かった。僕だけ勘違いしているのかと思って焦ったよ」

そう言うとジョーはフランソワーズをそうっと抱き寄せた。

「僕達はずっと一緒だ、って安心してたのに、そういう意味じゃなかったらどうしようかと思った」
「――安心してたの?」
「ウン。だってそうだろう?僕たちには未来があるってわかったんだから」

いつかきみを失うかもしれないと心配しなくても大丈夫だと保証されたのだから。
もちろん、未来なんていくらでも変わるけれど、でも僕たちは「一緒にいる」という事を当たり前の事ではなく、お互いに大切な事だと認識して
積み上げていければ、そこから先はたぶん・・・

 

 

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