フランソワーズにはそう言ったものの、自分たちの子孫がいるということが、自分たちはこのままずっと離れずにいる――という証明にはならない、とジョーは思う。
何故なら、やはり――「未来」は可変性があるからである。
これからの自分たちの在りようでいくらでも変わる。

フランソワーズには、彼女が不安にならないようにああ言ったけれども、彼女の言うところの「自分たちの子孫」がイコール「自分たちふたりの子孫」とは必ずしも言えるわけではないのだ。
そのことに彼女は気付いているのだろうか?
もしかしたら、フランソワーズの子供とジョーの子供が別々に存在し、その子供同士が交わってできた子孫――なのかもしれないのだ。
それでも、「私達の先祖はあなたたちだ」と彼らには言える。
だから、子孫がいるからといって自分たちの未来について安心できる要素は何もないのだ。

 

――しかし。

自分の腕の中で、安心しきってすやすや眠っているフランソワーズを見ると、そんなにややこしい考え方をしなくてもいいのかもしれないとも思う。
いくら可変性のある未来とはいえ、自分たちがこれからもずっと一緒にいるのなら、それはおそらくそのままの未来なのだ。
フランソワーズの願う未来は、はからずも自分の願う未来と同一のものだった。
だったら、このままずっと一緒にいれば、いずれは自分たちの子孫が現れることにならないだろうか?

ジョーはそうっとフランソワーズを抱き寄せた。

不確かな未来でも、いまここにあるのは確かな現実。
それを大切に守ることが何より優先されることだった。

自分たちの未来がハッピーエンドではなくても。
それでも、強く願うことで思い描いた未来が現実となるのであるならば。

――例えハッピーエンドではない未来しかこないとしても。
きみだけは、ハッピーエンドにするから。必ずするから。
だから、それまで・・・

束の間でもいい。一緒にいられる幸せを素直に信じていこう。

ジョーはフランソワーズの額にキスをすると、自分も目を閉じた。
抱き締めた胸の中の温かさは幸せそのものだと思いながら。

 

 

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