ねぇ、フランソワーズ。
僕は『彼』を殺したよ。
だって、当然だろう?
彼は君を傷つけた。君を殺そうとした。
君をそんな目に遭わせた奴を、この僕が放っておくわけがないじゃないか。

絶対に許せなかった。

だって、そうだろう?
君の視線の中に居た『彼』。
君の事を愛していた『彼』。
そして、君の優しさをにつけこんで・・・君の傍に居るという栄光を手に入れた。
ねぇ、フランソワーズ。
きみ、わかっていたのかい?
『彼』が君の傍で何を考えていたのか。

そんな『彼』に対し、君の方は「あくまでも同情しかなかった」とジェロニモは言っていたけれど、僕はそんなの信じないよ。
だって、君の「同情」は、いつか間違いなく「愛情」に変わる。
そんなの、この僕自身が一番良く知っている。
何しろ、君の僕に対する「愛情」は・・・ほんとうは「ただの同情」なのだから。
・・・そうだろう?
だけど君はその事に気付いていない。
だから僕は、それを隠す。
ずっとそうしてきた。
君が、ほんとうの自分の気持ちに気付いてしまわないように。
僕に対して君が持っていると思い込んでいる「愛情」が、実は「ただの同情」でしかないということを。
それに君が気付かないように。
「ただの同情」でしかないものを、「愛情」だと錯覚し続けていてくれるように。

そうして僕は、君の「同情」に敏感になった。
他の誰かに向けられる、君の想い。

それら全てに嫉妬した。

おそらく、僕は・・・君をひとりじめする為なら、どんな事でも出来てしまうだろう。
「君自身」を大義名分にして。
君を守るため
君を助けるため
なら、他のどんなもの・どんなひとを壊しても傷つけても構わない。と。

そして実際に、僕はそうした。

束の間でも、君の視線を独占した『彼』
君の傍に居て、君の笑顔を君の声を・・・「その時」間違いなく「ひとりじめ」していた『彼』
どんな事情があったとしても、僕がそれを我慢できる・・・我慢すると思っていたのかい?