・・・やっぱり、駄目。

いったんは毛布の下にもぐりこんだものの、全く眠れず、しかも背中合わせとはいえ、ジョーも眠っていない事には気付いていた。
意を決して身体を反転する。

だって、きっと誤解してる。

ジョーの背中に額をくっつけてみた。
ぴくりと彼の背中が揺れた。
今度はそっと手を伸ばしてみる。
背中から、彼の身体を抱き締める。
でも、動かない。
まるで無言の拒絶のようにも思えて哀しくなった。

こっちを向いて

 

 

あなたが出かける時。
私の頬にキスをくれて、そうしてすぐに口紅の色が違う事に気がついた。
びっくりした。
わからないと思っていたの。あなたに口紅の色なんて。
普段だって、あなたにもらった口紅かそうでないかの区別もついてないと思ってたから。
だから本当に驚いた。
それに・・・あなた以外の男のひとからもらった口紅だったから。

だけど、あなたの瞳にちらっと一瞬、嫉妬の色が見えて・・・嬉しかった。
だから思わず目を伏せてしまった。
そうしないと、微笑んでしまいそうだったから。

だって。
あなたが妬いてくれるのって、嬉しい。
普段、絶対にそういうのは見せてくれないから。
むしろ、そんなのどうでも関係ないみたいに平気な顔をしているあなた。
私が、あなたの隣にいる女の人をどんな想いで見つめているのか、絶対にわかってないわよね?

あなたは私に何も言ってくれない。
ううん。
むしろ、他の女の人にしているのと同じ事しかしない。
肩を抱いたり。
抱き締めたり。
優しく見つめたり。
だから、私はその度に、ああ、ジョーがいまこうして私と居るのは、別に私が特別なのではなくて、仕方なくなんだわ。・・・と思いしらされる。
ブラックゴーストにサイボーグにされた可哀想なおんなのこ。
あなたにとっての私の位置はそんな感じでしかなくて。
だから私は、勘違いしないように必死だった。
ジョーは誰にでも優しいの。私だけじゃないわ。って。

 

 

私が彼に刺された時。
あなたはすぐに来てくれた・・・と、後になって知った。
大会直後の忙しい時にも関わらず、加速装置まで使って。
目が覚めたとき、あなたの顔を見られて嬉しかった。
だけど、ずぅっと怖い顔のままのあなた。
何にも話さないの。
ずうっと無言。
何を考えているの?とも訊けずにいた。
そうして今日まできてしまった。

ねぇ、もしかして誤解してない?彼のこと。

私と彼は、誤解されるようなものではないのよ・・・?