「――誕生日?」

ええそうよ。と003は微笑んだ。

「不本意ながらまた集まることになってしまったけれど・・・、ちょっとしたお互いのお祝い事とか、忘れないようにしたいな、って思って」
「・・・ふぅん」
興味が無かった。

再び車の雑誌に目を落とそうとしたら、横からひったくられた。

「・・・!」

002だった。

「フランソワーズが訊いているんだから、ちゃんと答えろよ」

やれやれ。何をそんなに熱くなっている?
そうやってすぐ熱くなるから、レースでも僕に勝てないんだ。

「あなたはいつなの?ジョー」

邪気のない蒼い瞳を見ていると、ちょっと意地悪したくなった。
きっと彼女は毎年毎年、友人や家族に祝ってもらって幸せにその日を過ごしてきたのに違いなかったから。
そして、きっと他の人もそのように過ごして来たと信じて疑っていないから。

「誕生日って、どっちの?」
「えっ」
「人間として生まれた日?それともサイボーグとして目覚めた日?」

声もなく見つめる蒼い瞳。

「貴様っ」

いきなり胸倉を掴まれた。

「何を言い出すんだ、彼女に!」
「離せよ002」

片手で払う。

「だって、本当の事だろう?僕たちの誕生日ってどっちの事だ?」