目の前にいる彼女が鬱陶しかった。 幸せに年を重ねてきたのであろう彼女が。
「ごめんなさい」
いきなり彼女が言った。 いったん瞳を伏せて言った後、今度は僕の瞳をじっと見つめてニッコリと笑んだ。 「私の訊き方が悪かったのよね?」 ちょっと首を傾げて続ける。 「ジョーの誕生日は・・・私たちに初めて会った日。――で、いいわよね?」 「なっ・・・、おい、フランソワーズ!」 002が今度は003に向かって気色ばむ。 「何だよそれ。それはコイツがサイボーグになった日って意味だろう?」 静かに肯定すると、僕の方を見てもう一度言った。 「いいわよね?ジョー」 そう言うと、もう一度微笑んでから部屋を出て行った。 ――結局、そういう事だ。 彼女は冷酷に判断した。 僕がサイボーグになって得たもの、それは「誕生日」だった。
――どうでもいいさ。 そんなもの、どうでもいい。
***
どうして女の子って誕生日なんか気にするんだろうな。 「あなたの誕生日はいつなの?」 邪気の無い瞳で。 「そう。じゃあ・・・――座ね」 星座なんて、聞いてもよくわからない。 「んー・・・・タイプが一致しないのよねぇ・・・」 当然だ。 「――でも、もうすぐね。誕生日。プレゼントを考えなくちゃ」 そう言って、彼女は黒い瞳を輝かせた。 でも結局、彼女からプレゼントを貰うことはなかった。
ほら。 酷く惨めだった。
***
誕生日。 クリスマス。 世の中の、公然と贈り物をする日。される日。 僕はそれらの日全てが嫌いだった。 ――偽善者ぶって。
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