うっすらと意識が戻ってくる。

周囲の音が少しずつ聞こえてきて

 

「――・・・?まだ――」

 

何だ?

 

「だめ――うごか・・・で――」

 

何を言って

 

身体を動かそうとして気付く。

何も動かない。

 

俺の手はどこだ?

 

俺の足は?

 

俺の・・・身体は?

 

意識だけはしっかりあるのに、周りのものが何も見えない。何も聞こえない。ただ、真っ白いなかに自分の意識だけがぽっかりと浮かんでいた。

 

俺は・・・意識だけしかないのか?

 

その瞬間。

 

「ダメ!動かないで!!」

 

大音量の声と共に――スイッチが入ったように映像が入った。
瞬間、流れ込んでくる音音音。人の声、電子音、アラーム――足音。複数の。声。
そして、揺れる赤い色――黄色。蒼い・・・瞳。

 

「ジョー!!」

 

俺は――

 

 

 

生きていた。

 

 

 

***

 

 

 

新しい身体は中々慣れなかった。けれど、気に入った。
これで前よりも性能が良くなった。戦うのにこれほど有利なことはない。できればもっともっと機械の部分を多くしても構わなかった。どうせ、――戦うしか能がない。

新しい身体は以前よりも精巧だったから、ネジの締め具合ひとつでも身体のバランスが変わってしまい、しばらくは歩くのさえやっとの状態が続いていた。
それでも、日々身体を動かして不具合を見つけていかなければならなかったから――性能が良くなったくせに全くいう事を利かない機械の身体を引き摺り、俺は毎日リハビリという名のメンテナンスを行っていた。

心配顔のメンバーも、俺の身体が復元されたことを確認してから三々五々故国に帰っていった。
ひとりを除いて。

003は帰らなかった。

001と博士を置いては帰れないという。
ついでに俺の事も気になっているというような事も言っていた。

――全く、不愉快だった。

まるで腫れ物に触るように。

壊れ物を扱うように。

薄っぺらい、好意。
可哀相な機械人間の世話をしている私って偉いわ――とでも思っているのだろう。つまり、ただの自己満足。
そんなのを満たすためにわざわざ居残るなんてご苦労なことだ。

彼女はいつでも優しい。
厳しいことは何も言わない。
今日は歩きたくないと言えば、そういう日もあるわ無理をしなくていいのよ――などと言う。
俺が、今日は走ってみるかと言えば、そうねまだちょっと早いかもしれないけれどあなたがいいならいいわ――と、止めない。
俺が何を言っても。
どんな無茶苦茶を言っても。

肯定しか、しない。

微笑みながら。

――何だよ、それ。

そんな好意なんか――俺は今までいやというほど色んな人から貰っている。
だから、足りているんだ。
そんなものは要らない。
俺にそんなものを――寄越すな。