この私がジョーのバースデーをスルーするわけがないでしょう!!
もっとも、未だに怒っていますけど何か?
怒髪天を突くとはよく言ったものだと思う。実際、昨夜の電話を切ったあとの私はまさにそんな感じだったのだから。 …………。 思っているのかもしれない。ジョーは。 ああ、メンドクサイ。なんて手がかかる。 自分の誕生日を楽しみにできるようになって数年。誕生日に落ち込むこともなくなったし、来年も楽しみにしてるよなんて言ったりもするようになった。だから、昨夜の電話で「迷惑だ」なんて言ったのはきっと、売り言葉に買い言葉の一環で、単に引っ込みがつかなくなってしまったのだろう。そのくらいわかる。 わかるけれど。 だったら素直に謝ってくればいいのにそれをしないのが頭にくる。絶対、後悔しているくせに。 なのに。 ジョーのばかっ。 おかげで、ジョーのお誕生日を祝うプロジェクトが台無しじゃないのよ。どうしてくれるの、もうっ。 今頃ジョーはひとりぼっちでマンションの自分の部屋に居るに違いない。落ち込んでいる時、外に遊びに行くなんて発想は無いひとだから(もちろん、ずうっと昔はあったのかもしれないけれど)。 ふん。 残念ね。 そんな思い通りのことなんかしてあげないの。 今日は反省しなさい、ジョー。 私はこんなに元気にしているから、なんにも傷ついてないように思うでしょうけれど――まあ、実際、傷ついてはいないけれど――けっこう酷いことを言ったのよ?あなたは。
私はカフェでお茶を飲んでいた。 今日はジョーの誕生日。でも、あと数時間で終わってしまう。 きっとジョーは「もうフランソワーズは来ない」って思っているだろう。 でもね。ジョー。甘いわよ。 そんなわけ、ないでしょう。
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プランCといっても、何も大層なことをするわけじゃない。 ただそれだけの……こと。 なんだけど。 私にとっては「ただそれだけのこと」って一言で言ってしまうとちょっともやっとしたものが胸に残ってしまう。 プランC。 それは、ジョーの部屋にこっそり侵入してびっくりさせようっていう計画。 でも、もしもそんなジョーが居たら、それは彼じゃない。 偽者だ。 どうか、偽者ではない本物のジョーがいますように。
私はどこかずれたような気がするお祈りをしながらドアを開けた。ジョーの部屋だ。 ジョーの気配は――無い。 え。 いない? まさかの、外に遊びに出かけちゃったバージョン? それを裏付けるかのように玄関も廊下もその先に続くリビングも真っ暗だった。 ジョーは。 いるの? いないの?
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